お家さん〈上〉 (新潮文庫)
明治維新間もない頃から昭和初期にかけて神戸に本社を構えて活躍した総合商社「鈴木商店」の女主人である鈴木よねと、その周りで彼女を支えた女たち、一時は「鈴木商店」を三井物産や三菱商事をも凌ぐ日本一の総合商社へと育て上げていった男たちを描く、壮大な大河小説です。
主人公やその周りの女性たちももちろん素晴らしいのですが、私個人としては鈴木商店という実在した総合商社とそのビジネスの話がとても興味深く、また印象的でした。私個人もかつて数年間にわたり某総合商社に勤務していたことがありますが、恥ずかしながら、これまで鈴木商店のことは知りませんでした。小説ですのでフィクションも相当程度に含まれているようですが、大部分は史実に適合しており、戦前の日本最強の総合商社で命懸けで働く男たちのドラマは極めて感動的なものがありました。
多くの人に読んで頂きたい一冊だと思います。
鼠―鈴木商店焼打ち事件 (文春文庫 し 2-1)
昨年のライブドア社長逮捕劇をみて真っ先に思い出したのが
本書の金子直吉であります。
会社を大きくするために踏まねばならない地雷は星の数ほどありましょう。
急成長を遂げたものに対する嫉妬もまた、膨れ続けることでしょう。
夢バブルの成長と瓦解。我々は歴史から何を学んでいるのでしょう。
生きることの意味に答えを見出すことは、かくも難しい、と言わざるを得ません。
銀のみち一条〈上巻〉 (新潮文庫)
時代は明治の中ごろから。佐渡金山、石見銀山と並び称される生野銀山(現、兵庫県朝来市生野町)を舞台に、坑夫の雷太と芳野(美人芸妓)、咲耶子(医師の娘)、志真(咲耶子の世話をする女中)をメインキャストに展開される長編恋愛小説。
著者が、NHKラジオで着想の原点を「生野で、一本の美しい簪を見たときに、これを着けていたのはどういう人だったのだろうという思いから構想した。」というようなことを語っていた。たった一個のモノからこれだけの物語を創造できることに感嘆してしまう。
鉱山が舞台ということで「青春の門」に似た空気感があるが、物語自体は全く別物で玉岡ワールドを堪能できる。
田山花袋の「蒲団」からヒントを得たような個所もあるが、ここが違ってくると全く違うストーリーになってしまうので、全体の物語を生かすためにはこのままで良いと思う。
軟弱な恋愛小説には飽きたけど、次に何を読めば良いかと迷っている恋愛小説好きにお勧めしたい佳作。
お家さん〈下〉 (新潮文庫)
テレビドラマ関係者の方々へ
この本ほど連続テレビ向けの本は見当たりません 明治 大証 昭和へと続く一民間会社の壮大なるストーリーです
最後に台湾銀行の融資を断ってあえて倒産させたお家さんごりっぱ さわやかさが残ん読書感でした
天涯の船〈上〉 (新潮文庫)
何気なくこの本を購入。
ところが本の面白さに引きずりこまれて
寝食を忘れて没頭して読んでしまいました。
「替え玉」として財閥家の娘なりすまさなければならなかった
少女のお話ですが、内容が深いので概略を書いたとしても
的外れになってしまうほどのとても濃い物語です。
この本に出てくるように人を想う心やいたわる気持ちは
欧米化が進んでしまった今、
私自身が最も忘れていた「日本の美」だと思ったときには
少し反省もしました。
名作と出会ったときにだけある、
「ガーン」と来る感動と出会った感じがしました。
ちなみに、この値段でこの感動はコストパフォーマンスも
かなり高いです。