眠狂四郎 ~無頼控~ DVD-BOX
……なつかしい。
思えば昭和の末期、私が大学生の頃、すでにテレビ東京午後の一時間枠で再々放送していたシリーズであります。
当時は未だ、小学生がお爺ちゃんお婆ちゃんと一緒にテレビにかじりついている時間帯に、ころび伴天連の外人さんが裸の日本婦人に覆いかぶさるシーンを平気で放映していたんですな。
柴田錬三郎の原作では『切支丹坂』と銘打たれた作品が、『悪魔儀式いけにえの女体』になっているなど、テレビ視聴者の期待を高める刺激的なタイトルが続きます。
さて、眠狂四郎と言えば、日本のピカレスク・ロマンの権化(?)。
狂四郎はゴルゴ13のようにいつも無表情であればよく、必ずしも正義の味方である必要はないはずですが、無頼控では「しばしば」どころか、頻々と義のために一肌脱ぎまくります。
「こんな狂四郎はイヤだ!」という人もいるかも知れませんが、考えてみれば映画の市川狂四郎だって、原作から観れば、ずいぶん砕けております。
あらためて、片岡狂四郎のツンデレ的魅力を掘り起こしたいと思います。
真田幸村 (文春文庫―柴錬立川文庫)
真田幸村は、小学生の低学年の頃からの憧れの人である。
何ゆえに、少年時代の吉里爽はこの武将に魅了されたのか?
血湧き肉踊る伝奇ロマンで彼の生涯を彩った柴錬氏のペンの魔力による
ところも大いにあったと思う。
きっかけは氏の原作によるNHKで放映されていた人形劇だったのだが、
忍者軍団の真田十勇士を率いて徳川の大勢力に立ち向かい、潔く散る
その姿に、散りゆく桜の花にも似た美しさを感じていたのだろう。
江戸時代の講談に始まり、後の立川文庫、そして荒唐無稽さでは
それらに引けを取らぬ柴錬立川文庫のこの1冊に至るまで、
幸村を取り巻く判官びいきを大いに刺激するストーリーには、
日本人の心の奥に届く何かがあるのかもしれない。
今にして思えば、徳川家康や豊臣秀吉のような天下人ではなく、
地方の小大名ながら知力と胆力で後世に名を残した幸村に
心底憧れたところが、へそ曲がりの吉里爽らしい。
あまたの戦国武将の中で、所有していた禄高で言えば
「インディーズど真ん中」に違いない戦国武将・真田幸村が
貫いたとされる反骨の生き方こそが、吉里爽の精神的な
ルーツであると思っている。
くちぬい
放射能を恐れて、東京から夫婦が避難したのは、かねてから陶芸好きの夫が惚れ込んでいた高知の山村。
ところが、笑顔で迎えられ、いい人ばかりと思えた村人の態度は変わります。
そのきっかけは、村の習慣で建物を設置しない場所に、陶芸用の窯を作ったこと。
その後、様々な嫌がらせらしきものが始まりますが、村人の誰の仕業かわかりません。
もともとの村人以外、例えば、他から通ってきている役場の人や駐在所の人には、
村人の人間関係は明らかにされません。
そして、最後の最後にくちぬいの姿が明らかになります。
その姿とは.....
四国を舞台にして古くからの因習に結びついた話ですが、もっと因習の暗部を描いてほしかったというのが、
正直なところ。それに、放射能を逃れて移住するという設定がなくてもよかったのでは? というより、
無理に現在進行形の出来事に結びつけない方が、人の怖さが描けたのではないかと思います。
放蕩記
いろんなご意見があるようですが
評価が低い方は、幸せな家庭で育った人が多いのでは。
母子関係なんて、嫁姑問題より根深いと思う。
私自身、何不自由なく恵まれた家庭で
お母さんも明るくて面白い人で・・・
幸せな家庭で育ったと人・・と思われていたようですが
人なんて、勝手なことをいうもんですね。
母子の関係が悪いというと、人は決まって
「子供の方が悪いに決まっている」とか
「でも親だし・・・」とか
テキトーなことを言います。
私も、夏帆の母と似たような母親に育てられました。
教育という大義名分の下、殴られ蹴られ、
しかし一歩外に出ると、世間に気を遣う母。
自分に子供ができたら、母に対する気持ちも変わるのではないか
と期待したけれど、一人目では子供時代の記憶が蘇り、辛い子育てとなり、
二人目を産んでからは、自分で発想の転換をしなければ
子供諸共不幸になると、親との連絡を絶ちました。
夏帆の気持ち、痛い程わかります。
私も、一線を超えてしまっていたら
何をやらかしていたかわからないと思う・・・。
うちの母親の場合、20年間に2人という不倫相手
もいたので、夏帆の方がまだマシかな。
父親の留守の時に不倫相手が家によく来ていたので。
父親に言っても兄妹に言っても
「本人がそれで機嫌がいいんだからいい・・・」というような馬鹿げた反応。
家族公認愛人というわけです。
子供の頃は
私もやはり夏帆のように、言いたいことなんて言えなかった。
いえ
本の中では、夏帆はまだ何も吐き出していないと思う。
もっと激しく母親に罵って欲しかった。
夏帆は優し過ぎると思う・・・
夏帆が吐き出すことをしていたら
どうなっていたのだろう。
母親は変わらないとは思うけど。
本の最後の方で、夏帆のお兄さん弘也が
車中で夏帆に話した言葉は、すごく救われました。
私には、弘也兄さんみたいなわかった人は家族にいませんから。
お父さんの心境も、お母さんの関西弁と並んで
書いて欲しかったです。
・・・本の話の内容に結論はありませんでしたが、
村山さんの中でも、お母さんへの結論がまだ出ていないのだなと
思いました。
私は、母親とは死ぬまで会うつもりはないです。
図々しい奴 [DVD]
植木等、ハナ肇に続くクレージー・キャッツ第三の男・谷啓の主演作。
佐久間良子をヒロインに迎えた正統派人情喜劇である。
時代背景は第二次世界大戦前、孤児だった谷啓は岡山の華族の御曹司と
東京の老舗羊羹屋の娘に気に入られ立身出世してゆく。
だが戦況は厳しく……
谷啓さんは無責任男・植木等と、テレビでは全くつまらなかったハナ肇が、山田洋次の演出のもと
朴訥な馬鹿という特異なキャラクターを開発していることを気にしていただろう。
自分はどうすべきか。クレージー・キャッツで最も作家性が高かった谷啓さんは、
この映画でその作家性を封印した。瀬川昌治監督にすべてを預けたのである。
その結果できた喜劇とは……