家光謀殺―東海道の攻防十五日 (文春文庫)
実在人物を配しながら家光暗殺計画を阻止するための集団(一味)の活躍が面白く描かれている。意外な人物も現れ守り立てている。歴史小説153作品目の感想。2008/08/28
木枯し紋次郎 (一) 赦免花は散った (光文社文庫)
記念すべき木枯らし紋次郎第一話「赦免花は散った」だが残念ながら
TVドラマ未発表作で映画化はされているが菅原文太氏が主役で
中村敦夫氏のイメージが強い私としては一寸残念な気がする。
さてストーリーだが、幼馴染の兄貴分に騙され絶海の孤島三宅島に
流されるのだが、流人仲間と共謀して脱出し自分を騙した兄貴分を
探し出し復讐するという内容だ。
南海の楽園とはほど遠く、近年起こった島民全員島外避難のニュースを
見てもそうだが火山の爆発による溶岩の流出と毒ガス。
受刑者への銃殺刑が青く晴れ渡った空の下、9月なのに真夏の様な暑さ
が非情とも思えるようなムードの中でボロボロの衣装を着た流人達
の見守る中おこなわれ、読み手のほうも汗がにじんでくるようだった。
三宅島の噴火が起き、島民たちの大混乱に乗じて紋次郎と流人グループ
が脱出に成功した場面は映画「パピヨン」とアレクサンドル・デュマの
「モンテクリスト伯」を連想させた。
お花・源太の島抜け船上のまぬけな行動には笑ってしまった、流人同士の
結束の無さが一層紋次郎の孤高さを強調する様に思えた・・・。
愛人岬―笹沢左保コレクション (光文社文庫)
とにかくド助平なのである。笹沢佐保の小説に出てくる女たちは。
純愛ラブストーリーなんてものではない、愛欲セックスストーリーそのものだ。
主人公・香織は会社の同僚・水沼と愛人関係にある。水沼との不倫旅行中に殺人事件が起き、水沼は容疑者として疑われることに。主人公は愛する男の無実を証明するために奔走するが、しだいに水沼に対する疑念が心の中に生れてくる・・・。
とはいえストーリーとともに、主人公の愛の対象は、水沼自身というよりは男とのセックスそのものに変わっていく。
水沼のペニスを「これを水沼のものだという意識はない」と感じて、ペニスを「X」と名付けて、「Xと別れるのかと思うと辛かった」となるのだからたまらない(笑
笹沢佐保の面白さは、これほどのド助平女でも嫌味に感じさせない筆力にある。主人公の性欲の強さに苦笑いしながらも、どこかしら可愛く感じてしまう。これは他の笹沢作品でも同じだ。
面白いことは間違いないが、三十年前の小説だ。古さは否めない。さらに二時間ドラマっぽい終わり方もいささか・・・
それで★を一つ減らした。
木枯し紋次郎(上): 生国は上州新田郡三日月村 (光文社時代小説文庫)
時代小説が好きで今までも鬼平や眠狂四朗にはまりましたが、木枯し紋次郎は特に良いです。時代小説のジャンルを超えた おもしろさがあります。名作なので全十五巻再販してほしいです。
軍師竹中半兵衛 (角川文庫)
日本の諸葛孔明こと竹中半兵衛の36年の人生。私は高校生の頃、この本を書店でパラパラ読んだら止まらなくなり、店頭で60Pまで読んでしまい、結局買ってしまった。当時、本を最後まで読んだことが無かった姉が、勢いで全部読んでしまったほど面白い。
お市の方とのロマンスなど、やや創りが多い印象を受けるが、小説としての面白さは高い。と、いうよりも題材が良いのかもしれない。青瓢箪のウツケと呼ばれた色白の美男。そのくせ難攻不落の稲葉山城を、手勢17名で落とす快挙。そしてすぐに城を返還した潔さ。プロセスこそが生きる張りという人生観。とにかくもう、こいつがカッコイイ。
歴史小説が好きで、かつ未読の方は折あればぜひ読まれたし。 何んといってもこれぞ隠れた名著。