クラシックBOOK―この一冊で読んで聴いて10倍楽しめる! (王様文庫)
N響首席オーボエ奏者で、『のだめカンタービレ』音楽監修の茂木大輔氏が
選曲されたCD付きということもあって、気になって買いました。
本の内容は、他の方がレビューで書いているとおり、
今までにないユニークな切り口、かつ読みやすいポップな文体で書かれており、
予想以上に面白かったです。入門者以外の方も十分楽しめる内容だと思います。
特別付録CDですが、“Love Classics〜愛のアルバム〜”というテーマのもと、
エルガーの『愛の挨拶』、ショパンの『別れの曲』など有名な曲から
茂木さんらしいオーボエの演奏が際立つ選曲もあり、とてもいいです。
また、「『これぞ!』という世界の名曲、名演奏を選び抜きました」と
本書で謳っているとおり、この手の付録CDにしては、
かなりクオリティーの高い演奏が詰まっています。
レコード店で、CD単品で売っても遜色はない素晴らしい内容だと思いました。
唯一難点は、ミニCDなので演奏時間が限られていること。
せっかくの良いCDなので「もっと聴きたい」というのが正直な感想です。
(それを踏まえて、星はマイナス1)
まぁ、あくまでも付録CDですし、ガイドブック付きで、
この価格であれば、かなりお買い得だと思います。お薦めの本です。
オーケストラ楽器別人間学 (新潮文庫)
血液型占いも星占いも信じていない私としては、「演奏してる楽器で性格がわかるなんておかしい!」と思ったりもするけれど、よく考えてみれば、その楽器を選んだり、その楽器でプロになろうとしてたりするのは、その人自身が決めたことなんだろうから、そういうこともあるかも…?という気に、読んでいるうちになってきます。これでは、コンサートでブルックナーなんか聴いているときにオーケストラの人をまじまじ見てしまいそうです。困った…なお、この本は文庫化にあたって加筆・訂正されています。ハードカバーで読んだ方ももう一度楽しんでください。
読んで楽しむ のだめカンタービレの音楽会
のだめファンの方には、絶対お勧めの本です。
『のだめカンタービレ』は、コミックもTVドラマも映画も素晴らしくて、面白い上にクラシック音楽の高貴な香りに触れることのできる作品であり続けました。
その陰には、どうも著者の茂木さんが果たした役割が大きいように感じましたよ。
著者の茂木さんは、偶然原作と出会って大ファンになられました。
茂木さんは、N響のオーボエ奏者で指揮もこなすというプロの音楽家です。
その方が、嵌ってしまうほどだったんですね。そうなんです、プロが読んでも面白く、勉強になるのが「のだめ」だったんです。
茂木さんは二ノ宮さんにファンレターを出して交流が始まるのですが、「のだめ」に登場する音楽を実演する企画に向かい始めます。
一方で、TVドラマ化の、脚本監修やクラシック音楽指導なども担当。
茂木さん自身が、「のだめ」音楽を再現する一方で、ドラマを監修するというのは、『のだめカンタービレ』にとっては、凄く良かったと思います。
作品が持っている、クラシック音楽の高貴な香りはこうして保たれ、大ファンの茂木さんが脚本に事前に目を通すということでファンの納得感のゆく脚色に留まったと思うのです。
茂木さんは、「のだめ」現象とも言えるクラシック音楽の盛り上がりは、日本にもクラシック音楽がしっかり根を張っていたのではないか、とお考えのようです。
本当は好きなのに、そういうと面白くない奴だ、と言われそうで口を閉ざしていた多くの音楽ファンの気持ちを解放したのが「のだめ」だったのではないかな、と想像しました。
軽妙な筆致で、のだめのピアノ同様に楽しく読める本でした。
それに、音楽の解説が実に的確でした。
指揮者とはどういう存在か、どんな能力を身につけていなければならないか、千秋はどこが凄いか、などなど、改めて一つ一つの場面を思い出してします。
ああ、また「のだめ」が読みたくなってきた。
山下洋輔組曲
茂木さん自身がライナーノーツで書かれているとおり、これはあくまでもクラシックのCDである。それでいい。そんな事とは関係なく、ここではとても美しい音楽世界が繰りひろげられている。木管楽器が好きな方にはかなりおすすめ。
拍手のルール - 秘伝クラシック鑑賞術 (2011-09-22T00:00:00.000)
「拍手のルール」というタイトルから、拍手のタイミングなどクラシック音楽のマナー解説を想像しましたが、さすが茂木大輔さんだけに、一ひねりも二ひねりも! まず「拍手とは音量の大小、音程の高低、密度の密疎の3要素のかけあわせによって三次元的に変化する」と論文調で解説しています。「拍手の音量は拍手者の対外的表現意欲に比例する」「拍手の音程は拍手者の感動の表面性に比例する」「拍手の密度は拍手者の興奮度に比例する」といったぐあい。
拍手をこんな風に真面目にしかもユーモアをまじえて分析・解説するなんて、茂木さんの面目躍如です。「ここで観察したいことは拍手分布である。全員が同じような拍手をしている(統一的)か、かなり様々な拍手がブレンドされているか、それらが相互に影響を与えあっているか、というところに『聴衆の質』を看破することができる」だなんてプロ演奏者の凄みさえ感じるし、「次第に夜が明けてゆくように始まる拍手には感動的な表情がある」なんていう一文には、素敵なコンサートの情景を思い出してじーんときました。聴衆の拍手の中に含まれる多彩で微妙な表現を、音楽的な耳と感性を駆使してオモシロく分析してあります。もしかして拍手もまた、一つの音楽なのかもしれないなあと思わされました。
第三章「拍手のルール」の目次は:個別拍手音とその表現内容/集合拍手音の形成/拍手のタイミング/付加的・例外的喝采について/フライング拍手、フライングばぼー/フライング拍手防止法の提言/拍手の国民性/拍手の音楽史/他のジャンルの拍手観察
↑これだけでもじゅうぶん盛りだくさんですが、他に、指揮者式手記、名曲の曲名、調は曲の血液型、交響曲にかんするエッセイ……など面白くてタメになる内容が満載です。茂木ファンならずとも、クラシック音楽に興味のある方におすすめです。