少年少女飛行倶楽部 (文春文庫)
超個性派集団による物語。
主人公を除き、どこかがおかしい人物しかいない。漫画でも、小説でも見受けられないキャラクターゆえに、そこに面白さを覚え、読み進められる。逆に、もしこの物語の登場人物に面白さを覚えなければ、おそらく本作は実につまらないものとなってしまうことも確かである。
それほどまでに、私はこの作者が産み出したキャラクターに爆笑させられたのである。少し気がかりなところがあるとすれば、本作に出てくる登場人物は、ひょっとすると作者の知り合い、友人なのだろうか、ということだ。
ささらさや (幻冬舎文庫)
表紙からも想像できるようにとても優しいお話。旦那さんが事故で死んでしまい残されたのは弱い女性「サヤ」ともっと弱い赤ん坊「ユウスケ」悲しんでばかりいる彼女に、様々な問題が降りかかってくる。彼女が困ったとき、死んでしまった幽霊の旦那さんは
ささら さや
という音と共に「彼を見ることのできる人物」に憑依して現れ
「馬鹿っさや」
といいながら彼女を助けてくれる。
目新しい話ではない。驚くような描写もない。それでもこの話が好きなのは、その優しい世界に惹かれているんだろう。
七人の敵がいる
よくいく本屋さんにフリーペーパーとして1章だけばらで置いてあったのが
面白かったので購入しました。
家を建てて子供ができたばかりで色々大変で苦労している兄夫婦の話を聞いていても
自分にはあまり理解が及ばない世界の話だと思っていたのが
フィクションとはいえこういう事例を読ませていただくとなんとなく想像がつく様な気分になりました。
専業主婦、兼業主婦が共同作業をするうえで
まずはお互いの前提条件が違うことを理解しあうことが必要であるのにそれがなかなか埋まらないジレンマや
自治会の仕事や共働き家庭の役割分担などが同じ案件を見つめていても
見る人間によって見え方が違うことを兼業主婦の視点からだけではなく
男性、女性、学歴、収入、子供を産んだ年齢などさまざまな立場ゆえの考えがあることを
高い視点から全体を見て描くことに成功している良著と思います。
兼業主婦が主人公なので女性向けの内容かと思われるかもしれませんが、
ヒロインの「陽子」が高学歴、高収入、我が子への愛や労力を惜しまない賢母かつ
仕事以外の部分も非常に優秀な人物として描かれているのが嫌味にならず
性格や考え方が感情に走らない論理に適った思考パターンと良識に基づいていた聡明な人物として
描かれているので、私の様な男性からしても読みやすく受け入れやすいのではないかと感じています。
これから結婚生活なり子育てなりを考える上でのトラブルを回避するための
参考書ともなれるであろう本書のような書籍は
是非とも私の様な多くの結婚前の男性にも読んでいただいても損はないのではないでしょうか。
モノレールねこ (文春文庫)
「ななつのこ」など、日常の謎をさわやかに書き綴っている印象のある加納朋子さんが、家族や生と死といった重くなりがちなテーマを盛り込んで書いた短編集。
表題作「モノレールねこ」は庭に現れたでぶっちょの野良猫を通じた奇妙な文通を描いた作品。ラストでサトルがタカキに仕掛ける行為が個人的には大好き。
「シンデレラのお城」は偽装結婚した相手の男性には、目には見えない婚約者がいたというお話。奇妙な同居生活をつづける中、彼女は自分が抱えていた傷に再度向き合っていく。ラストのちょっとしたどんでん返しが効果的。
どの作品も死に接したときの優しい視点が加納朋子さんらしいなぁ……と思ってしまいました。
てるてるあした (幻冬舎文庫)
両親の借金のせいで高校進学を断念。夜逃げする両親の元を離れ一人
佐々良の街にやってきた照代。心を閉ざす彼女に差出人不明のメールが
届く。そして女の子の幽霊も現れて・・・。
高校進学をあきらめて、両親とも離れ、見ず知らずの街で今まで会った
こともなかった人の世話になる。15歳の女の子にとってはつらい現実
だろう。照代はその不幸な境遇をすべて人のせいにして、自分の殻に
閉じこもっていた。そんな彼女の心を開いていったのは、サヤを初め
佐々良の人たちだった。差出人不明のメール、女の子の幽霊。その
二つの事に隠された真実を知ったとき、照代の心に変化が生まれる。
冷たいと思っていた照代を預かった久代の本当の気持ちも見えてきた。
人と人との心の触れ合う瞬間はとても感動的だ。ラストはちょっと
ほろ苦い。読んでいると、心が癒されていくような作品だった。