人たらし道免許皆伝 (誰にでも、自分を大好きにさせてしまう方法)
「すべての人に、好かれるなんて幻想です。もし、すべての人に、好かれようとしたら、(中略)その緊張感が、さらに人を遠ざけてしまいます。」
その通りだろうけど、じゃーこのサブタイトルは?『誰にでも、自分を大好きにさせてしまう方法』って・・・。
それが星の数の理由というのではありません。それだけだったら、そんなことは気にも留めなかったかもしれません。
エピソードが自分の話ばかりで、そうでなければ観念だけで例の提示もないところもあり、ちょっとナルシストな印象を受け、私はこの人には蕩されないんじゃないかな、と思ったのです。
会えばいい人なのかもしれませんが、文章を読む限りでは、私の好みじゃありません。
「大変でしょう」は確かに相手が話すきっかけを作る「魔法の言葉」になり得るでしょうが、それも時と場合によりけり。今日のメークのノリはイマイチというようなときに男性の販売員に「洗顔大変なんでしょうね」なんて言われたら、遠回しだけどハッキリ言ってくれるなー、もう買い物なんかしないで早く帰ろって思っちゃいます。べつに男性販売員を相手に洗顔の面倒さにしろ何にしろ愚痴りたいとも思わないし。
「大変でしょう」は、むしろ、男性販売員に言ってあげたい。
まーでも「モテない男性というのは、女性は喋りたがっている、ということに気がついていないのです」というのは真実ですね。
「人たらし」のブラック心理術―初対面で100%好感を持たせる方法
交渉技術としては、論理を駆使する方法と、心理面で優位にたつ方法の2つがある。
前者の傑作として、「ハーバード流交渉術」や、「実践・交渉のセオリー」がある。
いずれも論理を駆使した正攻法のフレームを提示してくれている。
但し、弁護士やコンサルでもない限り、論理を駆使して交渉に勝つ局面というのは意外と少ない。
我々市井のものは、論理を知るものにとっては陳腐としかいいようのない交渉術に打ち負かされ苦汁をなめることのほうが圧倒的に多いものだ。
例えば、「頼むよ。」「無理だよ。」「頼むよ。」「頼むよ。」「しょうがないな。」のような論法は、
3段論法を知るものにとっては「トートロジー」でしかなく陳腐きわまりない。
しかし、現実には力関係や、押しの強さの問題から、この論法は陳腐ながら恐ろしいぐらいに有効な論法でもある。
こうした、論理の世界からは、「陳腐きわまりないが有効な」論法を心理面から幅広く紹介してくれているのが本書だ。
多くの心理学の学説の抜粋に過ぎない面は否定できないが、なればこそ通読してオイシイと思ったところだけ記憶すればいいのだ。
但し、テクニックを鵜呑みにしても、「生兵法は怪我のもと」を地でいくことになるだろうが・・・。
まぁ、怪我をしながら交渉がうまくなっていくと割り切ってどんどん怪我をすればいいのだろう。
スキーではないが、転んでいるうちに上手くなるのだろうから。
ともあれ、心理面からのアプローチでこうも実戦的に書かれた本は少ないので、一読する価値は高いと思う。
また、この本に感銘したひとは、同じく心理面からのアプローチ中心の「議論に絶対負けない法」をお薦めする。