戦場のピアニスト (新潮文庫)
映画「戦場のピアニスト」の脚本を本にしたもの。いわゆるノヴェライゼーションとは趣が異なる。
原作、つまりシュピルマン自身が書いた回想録は読んだが、映画は機会がなくて観ていない。原作はとても良い話だがこれを映画にするのはさぞ難しかっただろうな…と思った。そういう観点の興味から本書を手に取った。なるほど、なかなかうまい脚本であり、アカデミー脚色賞をもらったのもうなずける。およそ映画には向きそうもない作を、映画向きにデフォルメする一方で、原作の内容や雰囲気をかなり忠実に再現している。
だが、ホーゼンフェルト大尉との触れ合いは、もっと原作を尊重すべきだったと思う。たとえば原作には、シュピルマンが「あなたはドイツ人か?」と尋ねると、ホーゼンフェルトは怒ったように「そうだ、恥ずかしい事だが」と答える面がある。このセリフは、ホーゼンフェルトがそもそも良心的な人物だった事を示唆する重要なものだけに、本でカットされてしまったのは実に残念。映画がこの本の通りなら、映画だけを観た人は、ホーゼンフェルトは最初はシュピルマンを殺すつもりだったが、ピアノの名演奏にほだされて目こぼしをする気になった…と誤解するかもしれない。
なお余談だが、シュピルマンがホーゼンフェルトの前で弾いた曲は、原作では”ノクタ-ン嬰ハ短調”だったのに、映画では”バラード第一番ト短調”に変わっている事を、本書で初めて知って驚いた。”バラード第一番ト短調”が悪いと言う気はないが個人的には”ノクターン嬰ハ短調”の方が好きな事もあり、なぜわざわざ変えたのか不思議に思う。シュピルマンがホーゼンフェルトの前でピアノを弾いている場面の映画の写真が載っているが、それを見て私の耳の奥に響く曲はやはり”ノクターン嬰ハ短調”である。
ピアノソロ 戦場のピアニスト (ピアノ・ソロ)
2年前?に映画を観た帰りに買いました。
映画の曲はすべてショパンの曲なので、楽譜もそのまま載っています。
もちろん難しいですが、始めのメインの曲は頑張れば弾けるし、中に何曲か弾けるのがあります。
ピアニストでも弾ける人は少なさそうな曲は、CDを聴きながら楽譜を眺めるとかでも楽しいと思います^^
変に簡単にアレンジしてあったりしないのが、私は気に入っています。
戦場のピアニスト [DVD]
ユダヤ人収容所を描いた作品は「シンドラーのリスト」「ライフ・イズ・ビューティフル」
を筆頭に数多あるが、アラン・レネ監督のドキュメンタリー作品「夜と霧」を例外とすると、
私にとっては、この「戦場のピアニスト」が最高傑作である。
ポランスキーは私生活で色々胡散臭くもうひとつ尊敬できないのだが、映画監督としては
やはり巨匠と言わざるを得ず、「チャイナタウン」もそうだったが、黙って脱帽してしまう。
実在のピアニスト・シュピルマンの家族は、幸福そうで上品な生活を送っているのに、
戦争の波に巻き込まれ有無を言わさずどんどん荒んでいってしまう。ある時隠れ家の
小さな窓から下を覗くと、逃げ遅れたユダヤ人の殺戮が行われている。また雷雨のような
爆撃が収まって、隠れ家から這い出すと、見渡す限り瓦礫の街に変貌してしまっている。
これらの映像表現は、ポランスキーによって、圧倒的なリアリティで我々に迫ってくる。
「映画」が映画として、その役割と意味を多様化しつつある現在、この作品は貴重である。
戦場のピアニスト【日本語吹替版】 [VHS]
なかなか良かったと思います。実際にゲットーの経験があるロマン・ポランスキー監督の作品。もともと有名なピアニストの伝記だったようで、他の作品だったら話が展開するようなところ(出会った女性、蜂起、ドイツ兵とのかかわり、家族など)もあっさり流し、ひたすら逃げ回る主人公周辺を追いかけるという、あんまりない感じで話は進んでいきます。
感動大作だとは自分は思いません。厳しい迫害やむき出しの人間性など、ある意味迫力のある作品でした。
戦場のピアニスト
映画を観て深く感動し、是非原作を読んでみたいと思い購読しました。
この本では、想像を絶するほどの数奇で残酷な体験を、全くと言っていいほど感情を入れずに淡々とした文章で綴られています。
過去の時々の状況を端的に表現するだけのほんの一言から、作者のありあまる悲しみや憤りが伝わってきます。
この本を読んで考えさせられたもの、それは、「なぜに人は人に対してこんなにも残酷になれるのか」、「どんな不条理な状況でも人は人として尊厳を失わずに行き続けられるものか」と云うことです。
この本を読むと、人の中にある本質を考えずにはいられません。
私がこの本を読んで個人的に感じたことですが、人は二つのタイプに分けられるのではないかと。一つは、時として他人に対して残酷に振舞える人と、どんな状況下でも善良であり続ける人です。
その二つの差とはなんなのか? そして、自分はどうなのかと?
本の最後に、シュピルマンを助けたドイツ将校の日記が載っています。それを読むと、良心をすてられず迫害される側にいる人の苦悩がよくわかります。
本の中で何度も語られるフレーズの「こんなことをしても意味がない・・」が心に残ります。
まさに、戦争下で起きるすべてのことがそうであると感じさせる言葉です。
この本は、戦争とは何か・人の本質と何かを教えてくれる、人類にとっての必読本でしょう。