走らんか!
博多人形師の一家をめぐる,1年間の悲喜こもごもを綴った作品。95年に放映された同名のNHK朝ドラの原作とされていますが,この本では一話ごとに主人公が変わり,その人物を視点として物語が書かれます。
駆け落ち・婿入り・ホームシックなど,家族が抱える問題を縦糸に,どんたく・山笠・放生会などの博多風俗を織り交ぜながら話が進みます。視点の多さと問題の多様さという点で「渡る世間は鬼ばかり」みたいな感じ。
登場人物のセリフはほとんどがネイティブの博多弁。これが東北や関西の言葉なら聞きなれているだけにスラスラ読めるのだけど,関東人の私としては博多弁は聞かないだけに,読むだけでも一苦労。
それでも,本州から福岡を訪れる方は,この本を読めば,現地に着いての感動も5割増でしょう。
源氏物語(上)―マンガ日本の古典 (3) 中公文庫
絵は少女マンガとは違い、美しげなところはなく、ひきめかきばなの登場人物に感情移入し難い向きもあると思うが、余計なエピソードなどはほとんど加えられてはいなくて、刈りこみもほどよく良心的。風俗についても上手く描かれいると思う。
ストーリーを知るには手ごろな長さでまた、特別にすっとんだ解釈もない。ただ、大変面白く読めるかといえば、この作品に興味がないとドラマティックとはいいがたいのが難点。
博多っ子純情 (中学生編1)
長谷川法世先生は「博多っ子純情」で一世ば風靡した方ったい。去年だったか福岡に帰省ばした時に父がくさ、このマンガの1〜3巻ばプレゼントで僕にくれんしゃった。マンガについては「マンガばっかり読んどったら頭がバカになる」ってたしなめられた想い出があるけん、ずっと読まんでからくさ、きょうまで来たっちゃけど、今度福岡に帰るけんその前に読んじゃろうと思って読んだったい。
したらくさ、おもしろいのなんの、そして絵のうまかことうまかこと、一遍で長谷川しぇんしぇいのファンになったっちゃん。
このマンガの主人公は郷六平つう中学生でから、これっがなかなかいい男ったい。普段は悪ガキ仲間と一緒に「知っとーや?女のあすこは○○○つうとぜ!」とか言うとっちゃけど、これがまたタイトル通り純情ったい。隣りのねえちゃんに恋ばしたのはいいばってん、隣りのねえちゃんはちょっとやくざな兄ちゃんと遠いとこへ行きんしゃった。そいでも、ねえちゃんのこつば忘れんったいねえ、これが。
そいでもって侠気もあるったい。山(笠)もかくし、中学挙げて隣り町の中学と喧嘩になった時はこの六平しゃん、喧嘩途中で「祝いめでた」ば歌おうて提案ばして、喧嘩がおおごとになる前にお開きにしんしゃった。「祝いめでた」が出たらどんなに酒が飲み足りなくてもお開きにせないかんらしい。これがまこっと博多気質ったい。
五木寛之の「青春の門」で主人公の父親:伊吹重蔵は仲間が炭坑に閉じこめられたのば助けるため、腹にダイナマイトを巻いてその炭坑に単身走り込み、自分の命と引き換えに仲間ば助けるったい。その時の重蔵の言葉は「バカも利口も命はひとつったい!」この言葉の意味は、重蔵=自分はバカやけん、世の中の為にはあんまし貢献できんばってん、命は利口と同じ一つ貰っとうけん、ここで自分が死んで自分より利口な仲間ば助けることで世の中に貢献するっつう思いたい。博多もんはのぼせもんでお調子者であわてもんやけど命ば賭ける時には賭けるっちゃん。 そげな気風がこのマンガではびんびん感じられるけん、博多に興味ある人は読んでんしゃい!
因みにチューリップの唄に「博多っ子純情」があってこの歌詞がまた泣かせるったい。やけん興味がありんしゃったら聞いてんしゃい。 博多って町は排他的やなくて誰でも受け入れるっちゃん。そげな懐の深さがあるけん僕は好きやねえ。
皆さん、このマンガば読んで博多に。福岡に来てんやい!