お菓子ノート
著者のファンで、この本も早速購入。1作目の「お菓子の由来物語」は、色々なお菓子の歴史や由来を、2作目の「スイーツ断面図鑑」は、断面にまつわるエッセイ。3作目となるこの本は、特製フローチャートにしたがってお菓子を見ていくと、使われている生地の名前やクリームの種類がわかるというユニークな本。お菓子を構成する100以上のパーツについての解説は圧巻。よくケーキに刺さっているお店のロゴの小さな紙は「ケーキピック」。フルーツなどについている露のようなものは「ナパージュ・ヌートル」というゼリーのようなものだとか、今まで、名前がわからなかったり、なんだろうと思っていたものの内容がわかってスッキリしました。前半は基礎知識、後半は代表的なお菓子についてのトレンドやチェックポイントが書かれています。写真も綺麗だし、語り口調で書かれているのでとても読みやすいです。ケーキを食べるときに、この本を見ながら色々なパーツの名前を覚えていけば、いつかお菓子研究家になれるかも!?と思わせてくれる本です。
新人類、親になる!
世代論を日本社会、特に消費の分析と結びつける第一人者三浦氏の快著。団塊世代、新人類、団塊ジュニアの「三国志」が鮮やかに活写される。そのキーワードが郊外、断絶、豊かさの果ての無目的社会。筆者は、コンビニ・マザーを非難するのではなく、それをありのままに受け入れながら、まともな日本社会への提案を行っている。後ろ向きの道徳主義者に読ませたい。
中国新人類・八〇后(バーリンホゥ)が日本経済の救世主になる! (洋泉社Biz)
ちょっとタイトルは大袈裟な感じがしましたが、
中身はめっちゃくちゃ刺激になりました。
中国の時代と言われて久しいですが、やっぱり、
この中国の若者、有望ターゲットを掴まないと
いけないし、とても掴み易いということが分かりました。
本当に分かりやすくリアルに書いてあるので、
最近のリアルな中国動向を知るためにも、
おすすめできる本です。活かさないとね。
中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす (NB online books)
私は日本アニメの文化的影響力を研究する上でこの書を手に取ったが、その期待は良くも悪くも裏切られた。本書の論題は日本アニメそのものから次第に離れ、現代中国の精神的、政治的構造の解明に軸が移っていく。しかし著者が探求の末にたどり着いた推論は非常に説得力があり、凡百の政治・経済専門家が論ずる「中国論」よりも核心を突いている気がする。ただし日本アニメの文化的影響力についてだけ求めた読者は、やや物足りなさを感じるだろう。しかし、日本アニメだけではなく「中国人の本質」について知りたい者には必読の書だ。
「おたく」の精神史 一九八〇年代論
おたく論というより、おたくとその周辺の事象を手がかりに1980年代を論じた本。キーワードは、おたく、新人類、岡田有希子、エロ本、宮崎勤、黒木香、ディズニーランド、ガンダム、ビックリマン、プロレス、昭和天皇、オウムなど。著者の多彩な論述からうかぶ1980年代とは、(1)虚構への志向が強く、事物が記号・虚構・情報のレベルに把握されがちな時代、(2)他者をも記号で把捉するがゆえ、他者における他者性が不明瞭になり、時としてそれが抵抗として前景化した時代、といったものである。この状況は現在に至るまで基本的に変わっていない上、多様な変容を見せているように思える。
(1)のこと。現実世界に左翼的な歴史像を描くのが困難となった埋め合わせに、人は歴史外に大きな物語を求めた。例えばガンダムは虚構でありながら、その内部では整合的な歴史を備えており、虚構世界に現実世界と同じ秩序をみるおたくの志向に適うものだった。個々の作品(商品)の背後に大きな物語を見る「物語消費」という形をとることもあった(ビックリマンやエヴァなど)。ディズニーランドは、現実と完全分離した、虚構が可視化した空間として受容された。著者は大きな物語は、以上のように虚構内に留まるべきものと考えるが、オウム的虚構の現実化や歴史のナショナリズム的読みなおしなどは、大きな物語を現実に求めなおした現れといえる。
(2)のこと。他者を他者性において見られなかった犯罪者として宮崎勤を論じてる(天皇の死と絡めて論じておりおもしろい)。
本書は著者の自伝としての側面も強く、そこはかなりディープな事実が満載であり、人によっては興味を持てない部分もあるだろうが、スキップしながら論旨を追うのはそう難しくない。第4部は十分な議論がなく説得力に欠けるが、第3部まではすぐれた指摘も多く目を開かされることも多い。