Ladies of the Canyon
本アルバムは1970年のリリース。収録された"Woodstock"は同名の映画の中でCS&Nによって歌われ、"The Circle Game"は映画"The Strawberry Statement"(邦題:「いちご白書」)でBuffy Sainte-marieによって歌われるなど、作曲家として彼女がいかに活躍していたかがわかります。
現在、このアルバムの1曲目を聴いて(失礼なのですが)「可愛らしい歌い方だったなあ」と思ってしまいました。キーが高いこともありますが、そのように歌うことを求められた時代なのかもしれません。
本アルバムはギター伴奏を前面に出してアレンジした曲群と、ピアノ伴奏による曲群に分けられます。前者は当時の音楽シーンから多くの人に受けいられやすいものであったと思います。一方、後者は彼女の歌がより強く伝わってくるようで、アレンジ面でその後の彼女のアルバムの核となっていったように思えます。
Both Sides Now
本作は20世紀を回顧するように1920年代から70年代の曲を流麗なオーケストラの調べ、ピーター・アースキン等のリズムをバックに、ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター等をゲストに迎えてジョニが円熟した声で丁寧に感情を込めて歌いあげるシンフォニック・ジャズ・ボーカル・アルバムの金字塔。昔のように高音に張りのある声ではないが、本作では若干かすれ気味の声がオーケストラの中に溶け込む感じで実によい。
本作がよくあるスタンダード・ナンバー集と一線を画す理由は、上記サウンドの魅力以外に、曲順に沿って、恋に落ち、ときめき、やがてうまくいかなくなり、悩み、結局別れ、いい友達でいようとふっきれたのも束の間、また恋におちたいと願う、ジョニ自身を思わす恋多き女の物語を一編の映画で観せるが如く選曲・配置している構成の見事さ。離婚後もジョニのバックを勤め、本作では序文を寄せ、ジョニとともにプロデュースしているラリー・クラインとの関係も反映しているのだろう。そのように年輪を重ねたジョニの魅力を特に実感するのは「ケース・オブ・ユー」と「青春の光と影」のセルフ・カバー。前者は本作の中ほどで千路に思い悩む場面に使われ、後者は本作の最後で、「人生がどんなものか私にはいまだにはっきりとは判らない」と総括する。本作のために書かれた作品であるかのごとくにこれら永遠の名曲に光を当てるジョニの卓越したアイデアに感嘆する。30年の時を経て蘇る名曲の豊潤な香りの何と素晴らしいことか。
なお、ジャケットや歌詞パンフレットに散りばめられた絵は毎度のことながら秀逸。禁煙のサインが出ているバーで紫煙をくゆらすとはいかにも彼女らしい。
Hejira
初め聴いた時は地味めなアルバムだなぁと思ったのですが、いろいろ音楽を聴き漁った後に再び聴いたら素晴らしい作品だと気付きました。冷たい触感を伴えつつも人間の温度が垣間見られ1曲1曲じわじわ心に染み入ってくる感じ。アルバムの途中で止めれないトータル感。ジャケットのモノトーン調で乾いた感じと曲、歌詞もぴったりフィットしている一つのアートな芸術的傑作品。(国内盤は対訳が付いてるのでさらにお薦め。)
この作品に早いうちに会えて良かった。乗車チケット等がなくても、プレイヤーさえあれば簡単にトリップ(逃避行)に出れるから。
バカンスでも観光旅行でもなく、ただひたすら自分と向き合う為の旅ですが。
Begin Anywhere
1曲目のイントロから「これはいい!」と直感的に感じた。癒し系でありながら、また明日から頑張ろうと鼓舞されるような感覚に。日本人なのに、という例えは要らない。素晴らしい歌声、素晴らしい演奏。マストバイのアルバム!!
シャドウズ・アンド・ライト[完全版] [DVD]
ぜんぜん古くないですね。彼女のオリジナリティは未だに強烈なインパクトを与えてくれます。彼女の音楽は、表面的には、ロックっぽかったり、フォークっぽかったり、またポップス、ジャズと姿を変えるのですが、あくまでパターン化された音階(メロディアスさ)ではなく、スタイルそのもので表現していく姿勢がジャズそのものだと思います。そういう意味でモードジャズの大傑作であり、未だに新鮮である点がそれを証明しています。そして全盛期の心身ともに充実したジャコの演奏。他のメンバーもすごいけれど、とてつもなく雄弁なジャコのベースが全員を引っ張っていることは確か。