ひと粒の宇宙 (角川文庫)
30人の著者による珍しい本。
なこかのコンピレーション・アルバムみたいです。
非常に短い様々な作品が集まっていて、まるでカタログのようにそれぞれの作家の持ち味がわかります。
知らない作家に触れることができるし、ひとつひとつがとても短いので、読書につきものの“疲れ”がないです。
もっとこういった短い短い小説があってもいいと思います。
続編、出ないかな
英語で言うとはこういうこと (角川oneテーマ21)
「可能性はほとんど無限ですよ」という日本語は、状態を言いあらわす言葉をふたつ使って、漠然とした状態がひとつ作り出されているにすぎないという。これを英語になおすには、「可能性」という漠然たる一般化をやめ、当事者のひとりであるあなたの想像力に問題をすべてあずけてあるという、英語的な発想へもっていく必要がある。
どの例文も日常なにげなく使っているようなものばかりだが、あらためてこうして解説されてみると、日本語らしさとはいったい何なのか、また英語的な文章が何をめざしているのか、いやでも考えざるをえない。この本は「英語ではこう言う」というサンプル集ではなく、「英語で言うとはこういうこと」なんだ、と納得するための本といっていい。
日本語の能力が問われるとはどういうことか。それを知るには、片岡義男が例文の日本語を解釈するその鋭いメスさばきをみればいい。「もっとも実感的な言いかたというものが、個別にひとつひとつ存在しているのが、日本語の大きな特徴のひとつだ」。これなどカスタマ・レビューを書いている人には、思い当たることがあるのではないだろうか。当人の実感ばかりがあふれて、何ら本質的なことをいっていない文章(自戒です)にいらいらするのは、私ばかりではないと思う。
木曜日を左に曲がる
現実感と空想感、充実と空虚などの狭間を描き、いつものことながら不思議な読後感を抱くことができる「片岡ワールド」が全開。さらに、本作では詩人である女性を小説の中に登場させ、思いついたフレーズを順序や状況に関係なく書き連ねた上で、後々につなげていく作業を紹介しており、意表をつくタイトルづけのセンスを見せてもらった気がする。
本書のタイトルも素敵(読めば最後に「なるほど!」とうなずけます)だし、登場人物が語るちょとしたセリフも絶妙。例えば「浴衣はその人の本質を引き出す。」(確かに浴衣を着ると「バカボン」になってしまう人っている!)「コーヒーは勘定の外。」「初めて入るバーの匂い。」などそれはもう絶妙で、この作者でなければ書ききれない世界観となる。
デビュー作以来、永い間、いつも楽しませていただいており、今後ともぜひ、「フィクションとしての作者」が描く小説らしい小説をいつまでも読ませていただきたい。
彼のオートバイ、彼女の島 [DVD]
僕はこの映画をリアルタイムで劇場で見ました。当時片岡義男はベストセラー作家、法師温泉は「フルムーン旅行」キャンぺーンCMので大人気の温泉地、そして角川映画の秘蔵子原田ともよのお姉さんの登場、そして何より人気映画作家の大林宣彦監督作品。話題性十分の登場でした。劇場で映画を見てみると、大林監督が肩の力を抜いて、実験的な撮影手法を試したりして爽快なツーリング映画に仕上がっていました。「尾道3部作」のようなこってりしたノスタルジーを求めて劇場に来た人々には物足りなかったようで、大林映画の中ではあまり語られる事のない作品として埋もれていました。僕は自分がこの映画を見てバイク乗りなった程、この映画が好きだったのでdvdでこの作品が現代に蘇った事を嬉しく思っています。ツーリングの好きな人にはお薦めの作品です。
ピーナツ・バターで始める朝
相変わらず著者独特のタイトル付けの巧さにまずうならされる。写真、食材、文具などへのこだわり、うんちくがけして嫌味にならずさらりと読める。短編小説の名手だけにエッセイも適度な距離感が保たれていてとても心地よく響いてくる。教科書出版の東京書籍からの刊行で、多少不安もあったがとてもいい素材を厳選しており読み応えがあった。編集者に感謝!