我餓狼と化す (実業之日本社文庫)
戊辰戦争といえば、北越戦争、会津戦争、箱舘戦争など大戦争は多数の書手によって語られているが、本書には主に江戸開城の頃から江戸を飛出して各地で抵抗を続けた根性ある幕府方の人びとの生と死が活写されている。碓氷峠の戦い、飯能の戦い、足利梁田の戦い、飯山の戦い、市川の戦い、箱根山崎の戦いなど、初めて知る戦(いくさ)も多いが、場所はおおむね関東周辺であり、関東居住者には土地勘があるため一段と面白く読める。著者はまた銃砲の権威でもあるので、戦場における銃砲の効果が的確に理解できる。語り口はいつもの通り、歯切れ良く、一気に読ませる快著といえる。