はいからさんが通る 全4巻セット 講談社漫画文庫
大正時代を背景に繰り広げられるコメディ、とはいえ、なかなか時代設定もきちんとしている漫画です。竹下夢二の店「港や」がちょっと顔を出したり、「浅草オペラ」でプリマドンナが歌いだしたりすると思わず自分までタイムスリップ。柳町の芸者・吉次さんもいい味を出しています。
主人公の紅緒は跡無女学校に通う女学生。隣の家には幼馴染で紅緒を慕う歌舞伎役者の美少年・蘭丸が。突如現れた婚約者は、美貌の伯爵家の息子、伊集院少尉。シベリア出兵で少尉が亡くなると(実際は生きている)、紅緒の上司としてこれまた美貌の長髪編集長・青江冬星が現れる。という美男子のオンパレード。
ユーモアと恋の切なさが満載。現代の「ハイカラさん」にもうってつけの物語です。
はいからさんが通る(1) (講談社漫画文庫)
リアルタイムではなくアニメの再放送を観ていた世代です。少女まんがで、本当にププッと笑ってしまうものはこれが初めてでした…。ファッションや時折サラ〜と書かれている時代の解説など、意外と大人が楽しめる要素が多いと思います。ヒロインが酒乱なのが衝撃的ですが、逆に女性としてはすごく好感が持てて、楽しい友達を見ているような気分になります(笑)。落ち込んだときに読みます!文庫4巻ですが関東大震災の場面は少しドキッとして、今だからこそ、すごくリアルに感じました。
はいからさんが通る(1) (講談社コミックスデザート (172巻))
当時の少女漫画家の、教養や知識の高さを感じさせる、そんな作品です。 和歌や、歌舞伎などの伝統芸能、オペラも盛り込んでおり、物語は、大正時代から始まりますが、明治維新による、時代、価値観の転換、変貌、それから、繋がる大正時代に生きる、一人の女性(あるいは複数の)男性優位の社会、制度に対する、複雑な思いを抱えながら、かつ、心に秘める、乙女らしい、異性への憧れ、期待、そんな心理も含みつつ、悲喜こもごもと描かれています。 主人公は、単に気が強いだけでなく、芯が強く、自分の信念を貫く強さを持っており、また、他者に対する、思いやりを見せ、イヤミのない、かつ、インパクトのある、女性像となっています。 描画も、非常に丁寧で、表紙のカラーイラストの紅緒のファッションも、着物あり、袴あり、洋装あり、またヘアスタイルも、時代の変化に伴い、バリエーションがあり、とても綺麗ですね。 アニメ放送もありましたが、漫画に比べ、妙なギャグシーンを頻繁に入れており、話の腰を折る感じで、頂けない演出でした。