二十四時間の情事 [DVD]
この映画は、反戦、広島といった要素は直接的には関係ないと思います。「生VS死」、つまり、「体験したことVS見聞きしたこと」の間の埋めがたい溝。本人にとっての体験は、他人にとってフィクションであり、想像することはできても理解など出来るはずがない。私達が死を想像することができても、理解できないのと同じです。生きている人間は誰も死を体験していないのですから。(笑)しかし、もし、愛する人の死を体験することで自分も生きながら死んでいるような状態になることは死を意味し、強烈に惹かれあう異性と一緒に過ごすのは生を意味すると、、。強烈に惹かれあい愛し合うということは、物理的に生きているという次元から、精神的に生きているという次元に変えてくれると、月並みに言えば男女間では愛こそが至上であると、、、そして愛そのものは、幸福も不幸も持ち合わせているが、それこそが「生きる。」という意味だと、、。それを、記憶と忘却という言葉のフィルターを通して語っています。冒頭での広島に関する会話と、我々が日本人だからどうしても日本人俳優の方に主観を持っていきがちですが、映画の主観は主人公のエマニュエルの方です。彼女の過去の恋愛を岡田英次が聞くシーン辺りから、映画の主観は、彼女の方に変わります。日本人ならではですが、冒頭シーンの会話と日本男の方に主観をおいていると分からない映画ですね。いずれにせよ、ロマンチックだなー、こんな恋愛してみたいです。恋愛映画として傑作。
二十四時間の情事 [DVD]
原題どおり、これは『愛の映画』です。
ようやく戦争の傷が癒えかけた広島を映画の撮影で訪れたフランス人女優と日本人建築家が過ごした24時間が淡々と描かれています。
ここでは、登場人物は誰一人として名前がありません。しかし主演のエマニュエル・エヴァ、岡田栄次、そして劇中の当時の日本人誰もが、まるで白黒の印画紙に焼き付けられたように輪郭が鮮やかに感じられます。
核の恐怖が通奏低音となっている時代だからか、刹那に生きているような主人公たち。
24時間という限られた時間の中で、コルビジェ風の建築、都市の猥雑さ、水面に写るネオン、真夜中の繁華街が、ただ二人を通り過ぎていきます。惨禍から起き上がろうとしているヒロシマの躍動感とそこに横たわっている悲惨、それを包むのは文字通りモノクロームの光と影です。
その境界線で、愛が脆く起立しています。まるで、血の匂いが残っているヒロシマとフランスの無名の街ヌベールが微かに繋がっているかのように。
当時も今も、世界は矛盾に満ちています。
でも、この映画で描かれているものは、自然も、人間も、何もかもが、美しい。
六つの心 アラン・レネ [DVD]
おそらく、「七つの心」になってしまわないように、
あからさまに寝たきり老人の顔は見えないようになっています。
・・が、そんなことは全然気にならない演出力。
セリフが多い映画でもあり、屋内のシーンばかりですが、
映像の作り込みは上品。
雪の結晶のようなつながりがそれぞれに見受けられます。
最後は溶け合うように静かに消えていきます。
コメディ要素や謎の設定もあり、楽しめました。
二十四時間の情事 [DVD]
ひとは今にいて過去に生きる。あるいは過去のどこかで生きていたのかもしれない。過去とはそのひとの記憶にすぎない。ヨーロッパと日本。戦争の傷痕。それは博物館の陳列品だ。それらは過去の時間からも空間からも切り離され分類されて崩壊することなく曝されつづける。そして私たちはその意味からも死者たちからも固く遠ざけられている。この永遠につづく無の時間。それは物の死だ。記憶はひとの中にしか存在しない。いまいる「わたし」も「あなた」も、地球のどこか片隅にいて「今」という時間のはざまで不在のまますれ違っては離れていく。だから記憶は交感することもなく交差することもなく、ひとの中で時間を失ったまま留まりつづける。
二十四時間の情事 [DVD]
大人になるということは、社会化することとも言える。
しかし、その「社会」は一様でなく、国や地域、時代によって違ってくる。社会の「正義」も、時代とともに変わる。
主人公は第2次世界大戦中に、敵兵のドイツ人の若者と恋に落ちた。
初恋だった。
そして戦争が終わる。
その時、自分の属する「社会」の下した、自分への罰。
自分が属した「社会」との軋轢に苦しみ続ける主人公。
苦しみのあまり、地下牢の壁をひっかき、指から血が出る。
しかしその時は、苦しみから逃れられる。
悲しい記憶から開放される。
苦しい記憶であればある程、人は、忘れたくなる。
記憶を消そうと、防御する。
なのに、ふとした日常の中で、よみがえる記憶。
戦争を知らない若者達が、「戦争を忘れるな」のプラカードを当然の「正義の行為」として掲げ、一方向に行進していく。
「忘れるな」と簡単に言えるのか。
あの苦しみを、「忘れるな」と言うのか。
主人公はラストで、「社会」と自分を貫くことと、どちらをとるのか、再度問われる。