モンゴル帝国の興亡〈下〉 (講談社現代新書)
上巻がモンゴルの文明の破壊者という、悪しきイメージを打ち払う消極的なモンゴル再評価であったとすれば、それに続く本書は、そこから反転攻勢して、モンゴルが世界の歴史に与えた創造的なもの、新しく作ったものを再評価していく積極的な内容であると言えるでしょう。範囲としては、クビライ・カンの治世から、モンゴル帝国の崩壊、そしてその後を含んでいますが、主に前半のクビライ・カンの作り出したシステムの動向に目が向けられています。彼の作った体制がどのようなものでどんな性質があったのかが本書の実際の主題であると言ってもいいように思います。
そこの描かれている内容は、当に驚くべきであります。著者の謂いでは、クビライという人間がその後の歴史を作ったかのようです。大元ウルスの経済システムの説明などは、俄かに信じられないほど精密で、高度な経済政策が元では行われていたことが示されており、今まで聞いたこともない話ばかりでした。他の一般書では触れられても申し訳程度であり、全体として見られなかったものが、すわ全貌を現せばここまでの巨大な物体であったとは驚嘆です。しかしこれも、著者が打ち出している歴史への新機軸の主要であってもすべての要素ではありません。著者の視点はもっとマクロです。そのひとつに元寇への言及があって、弘安の役の江南軍が実は棄民船団であったなどという見解を目にしたときは、驚きと衝撃と共に著者の慧眼に感動したものです。
確かに視点がマクロすぎてちょっと細部が甘いのではないかと思わされたり、モンゴルに対する評価が過分に過ぎるのではないかと思わされるところが、玉に瑕ではあります。しかし、今までの歴史へのアンチテーゼとして、これほどまでに明確に為される歴史観の転換は十分に必要なことであると感じました。
世界史の誕生─モンゴルの発展と伝統 (ちくま文庫)
モンゴル騎馬民族のユーラシア制覇から、事実上の「世界史」が始まった!
「漢民族はいない!」など、われわれの中国観をも揺さぶる内容。
ギリシャ、ローマを始めとする西洋文明に捕らわれがちな歴史観に
稀代の碩学が根底的な見直しを迫る。
ちなみに、同じ著者による「妻も敵なり」は中国文化の一断面を知る上で、必携の書である。
奥さんが美人なのは悔しいが。
蒼き狼 地果て海尽きるまで ナビゲート ~史上最大の帝国を築いた男 チンギス・ハーン~ [DVD]
正直言って駄作です
どこに30億かかっているのか謎…。
チンギス・ハーン(反町隆史)の息子
ジュチ(松山ケンイチ)の苦悩の演技と
モンゴルの美しい景色が無ければ
星1つがイイ所。。。
松ケンの演技力に周りのベテラン俳優が
ついて行けてない。。。情けないの一言
モンゴル帝国の興亡<上> (講談社現代新書)
一般人向け世界史全集を何種類も読み、歴史系の新書も何冊も読んでますが、ある程度知っていると思っていたモンゴル帝国について、ほとんど知らなかったんだなあと思い知らされました。
高校で習った元+四汗国という捉え方が正しくなく、ウルスという概念を始めて知りました。二代目オゴタイの死がもっと遅ければ西ヨーロッパまでの侵攻も十分有り得たように思えます。フビライが伝統的・正統的な方法で大カーンに選ばれた弟を討ってカーン位についたことも、教科書では「アリクブケの乱」の一言。チンギスの弟たちについても何も知らなかった。
それにしても、大カーンやその有力候補者が絶妙のタイミングで急死を遂げるというのもここまで徹底するとすごい。暗殺ってよほどのことが無い限り歴史に残りませんからね。
「世界史」という概念がモンゴル時代に初めて出来たとか、ロシア・オスマントルコ・ムガールの近世まで続いた3帝国が大モンゴルの遺産であるというのも納得できます。
陳舜臣の「チンギス・ハーンの一族」も(文庫化されたし)お勧めです。