帝国ホテルの不思議
サービス業に携わっている人だけでなく、どんな人にも学ぶことのある本です!
さすが120年の伝統と歴史のあるホテルだけあり、働く方々のインタビューの言葉の
ひとつひとつに重みがあります。
「日本人のおもてなしの心」が最近クローズアップされていますが、
まさに今必要な本です。
買い物はネットや量販店でし、旅行はサービスを極力削減した格安航空機で・・・
そうなると、
心と心、ぬくもりを感じる経験をすることなく人は生きていくことになります。
ドラマや映画のエピソード以上に、ホテルマンたちは様々な経験をし、
そこから心からのサービスへと繋がっていくのです。
2400円とかなり高価な本ですが、自己投資のためにぜひ読んでください!
時代屋の女房 [DVD]
昭和50年代、古きよき時代の東京下町の商店街を背景に繰り広げられる、屈折した男女の愛の展覧会のような作品。原作は直木賞を受賞した。それを森崎東監督が映画化し、原作を上回る名品に仕立て上げた。
主役の真弓は若くして逝った夏目雅子、彼女の白鳥の歌ともいえるすぐれた演技によって、こんなに見応えのある作品ができた。この映画のなかで、彼女は最大に美しく、華やかで、愛らしく、しかも気品があり、きりっとして光り輝いている。
夏目の大胆・鮮烈な演技と渡瀬の表面淡々としながらも愛の苦悩あふれる迫真の演技が本編最大の見所であるが、助演者もそれぞれに好演で、津川、中山、平田などさすがと思わせる。どのエピソードもおもしろい。二役としての夏目の美郷も可憐さがよくでている。
なかでも、面白いのは、盛岡の馬を飼っている旅館でのどたばた騒ぎ。津川雅彦、名古屋章、平田満の演技が光っている。
原作は短編に近い短かさで、主人公はじめ主要人物も薄墨色の背景のなかに沈んでいる。人物も映画ほどに魅力的ではない。それに対し、本編は、人物の一人一人にスポットライトをあて、鮮やかに背景のなかに浮かび上がらせた。どの人物も魅力的である。映画が原作を上回っているという所以である。夏目雅子の追悼作品としても、是非一度ご覧いただきたい。
なお、この映画の主題曲も哀愁のあるいい曲で今では伝説的歌手となったちあきなおみが歌っている。懐かしく思われるかたもあるのではなかろうか。
俵屋の不思議
最強の京都本の一つである。
村松友視はいわずと知れた直木賞作家。
独特の切り口と語り口でファンが多い。
俵屋は、京都麩屋町の高級和風旅館。サルトル、バーンスタイン、ヒッチコックなど超セレブ級のセレブが泊まることで知られる。
その村松友視と俵屋のコラボレーションである。
村松が俵屋をルポするのではなく、村松と俵屋がガップリ四つに組んだ共同作品。どちらが主体/客体ではなく、主客一体の「超作品」なのである。
村松はその独特の文体で、俵屋に関わる様々な人々の生き様と、俵屋に寄せる思いを描き出す。
出入りの職人たち、商人たち、従業員たち。
いずれも京都の市井に生きる一線級の人々だが、村松の筆によって「超一線級」に浮かび上がる。
村松の筆が彼らを生かし、彼らによって生かされる。
俵屋は彼ら(村松を含む)を生かし、彼らによって生かされるのだ。
そう、俵屋は単なる旅館ではなく、アイコン、偶像、いやもしかしたら俵屋に関わる多くの人々の人格から成る一個の「超人格」なのである。
収録されている写真の数々も素晴らしく、「超表紙級」の唐紙のカバーも俵屋そのものである。
時代屋の女房 [DVD]
時代の設定や当時の風景は古いものですが、むしろ懐かしさを感じるぐらいに
適度なもので、かえって古道具屋の店の雰囲気とピッタリ合っていて
違和感無く見ることが出来ます。
夏目雅子さんは、この作品の2年後に帰らぬ人になりますが、
しっかりと役にはまった最高の演技を見ることが出来ます。
銀色の傘をさし猫を抱いて時代屋を訪れるシーンは、すごく可愛く愛らしい。
共演する俳優陣も個性派揃いで、森崎東監督の手腕も光ります。
下町の現実的人情味ある風景に、謎の家出を繰り返す真弓のミステリアスな行動が、
アンバランスなのに何故か面白い。
ラストシーンは、とても嬉しくなりホッとしてしまいます。
映画の舞台裏を案内してくれる特典映像は必見です。