歌舞伎名作撰 本朝廿四孝 十種香 / 平家物語 建礼門院 [DVD]
歌右衛門の最後の舞台、彼のエッセンスが集約された『建礼門院』は見物です。しかし、『本朝廿四孝』の歌右衛門や梅幸は、いくらなんでも、年がいきすぎ。もっと若くないと、DVDのように「目の前」で見るのはつらい。マニア向きといえるでしょう。
女形無限
人間国宝となられた雀右衛門丈の直筆エッセイです。
本当に読み易く、歌舞伎に携わる方独特の品の良さが伝わってきます。
ほんの少し歌舞伎独特の言葉が使われているので、少し知識と教養を要するかもしれませんが、人間国宝となられた後も決して謙虚さと向上心、そして人への感謝を忘れない精神は、雀右衛門丈の歌舞伎に対する志をとても良く表していると思います。
このような日本人固有の独特な精神はしかし、最近失われがちになっているのではないでしょうか。日本人の持つこうした、自分を決して誇示しないけれども誇りを忘れず努力し続ける姿勢の大切さが、人を成長させ続け、名声に頼らない見事なまでの強い精神を作るものなのだと改めて実感させられました。
中村雀右衛門さんは、もともと女形ではありませんでしたが、戦後に27歳にして女形として生きていく決意をなさいました。27歳という年齢は、女形を始めるのには少し遅かったのにもかかわらず、決死の覚悟で「がむしゃらに」ただひたすら舞台を学んでいらした様子が生き生きと書かれています。『戦後』という困難な時代の中を生き抜いていらした雀右衛門さんの様子が目に浮かぶような、そんな作品でした。その他歌舞伎の見所、女形としての「こころ」や「いのち」の大切さなどを含め、歌舞伎の時代の流れを背景に、多くの名役者さんとの交流が書かれています。
私は21歳ですが、雀右衛門丈のこの本を右手に、自分の信じた道をひたすら精進していけたらと思いました。
名女形・雀右衛門
感覚だけで、映像を見て、雀右衛門さんが好きだったんですが、
実際に具体的にどうして好ましく思ったのかが、
渡辺さんの言葉でわかったような気がしました。
それから、まだ見たことのない演目の決まりの美しい形がたくさん出てきて、
あれも、これも、見てみたいと思わせてくれます。
なんといっても、この表紙が!!!!!
歌舞伎名作撰 隅田川 / 英執着獅子 [DVD]
・『英執着獅子』は豪華絢爛な、私のような素人にもわかりやすい、魅力のある作品である。
・『隅田川』は、子供の死を知った母親の心理を描写する、ジョン・レノンが1971年に鑑賞した歌舞伎である。この映像が撮影されたのは1981年と時期は違うのだが、主役は中村歌右衛門で、ジョンが観た時と同じである。ジョンは、古美術商に連れられてたまたま観たのであるが、涙を流したそうである。
・作成者は松竹とNHKソフトウェアで、明るい『英執着獅子』と悲劇の『隅田川』を適切に組み合わせている。
・あらすじと出演者について日本語と英語で書かれた小冊子が付いている。さらに日本語と英語の丁寧な解説音声まで選択によって聞くことができ(衣装の意味までである!)、工夫が凝らされている。外国人に歌舞伎を説明する必要に迫られた人には役立つ。リージョンフリーであり、プレゼントにもいいと思う。
私事(わたくしごと)―死んだつもりで生きている
ちょっと歌舞伎を見たことある人や,全く歌舞伎役者の系列や家系を知らない人でも十分読める本です.歌舞伎のことについてはそれほど詳しく書かれておらず,「歌舞伎の世界本」といった「入門書」のつもりで買うと,ガッカリするかも.
かくいう私も歌舞伎はちょっと見ただけのクチ.
でも,雀右衛門の遅い女形デビューに始まる様々な苦労(お金の苦労,舞台での他の役者さんからの意地悪,仕事の苦労など)を読むと,「誰もみな同じような苦労があるんだな」と思わされる.
それでも「意地悪されたんだ」と逆恨みもせず,ひたすらに芸に打ち込み,80歳を越えてなお謙虚に「まだまだです」と芸(仕事)に精進する姿は,1人の人間の生き方として,共感できます.ほんとうに「死んだつもりで生きてきたんだな」と感銘を受けました.
歌舞伎の本というより,苦労続きで落ち込んだとき,失敗続きで落ち込んだ時に読むと,励まされる本です.