スタンリー・キューブリック DVDコレクターズBOX
彼の作品は間違いなく☆5つですが、このBOXに『博士の異常な愛情』『現金に体を張れ』が入ってないのが非常に残念です。入ってたら絶対買ってます。他の配給会社なので大変でしょうが、是非彼の偉大な作品とファンの為にも、その二点を追加した内容で発売頂きたい。なので減点1。
バリー リンドン [DVD]
一人の農民が貴族の地位にまで登りつめ、そしてその絶頂から転落していく様をじっくりと描き出したキューブリックの佳作である。俯瞰するかのようなどっしりとしたカメラワークは、こちゃこちゃとよく動く最近のカメラにはない独特の迫力と美しさを生んでいる。このような歴史劇ではどっしりとしたカメラワークが物語に厚みを加えてくれている。映像だけで見る者を惹きつけることのできる映画作家はキューブリックを含めて数えるほどしかいない。さはさりながら、俯瞰したようなカメラワークで捉えられるドラマは重厚であり荘厳であり美しいのだが、登場人物に血が通って生きているという実感がどうしても沸いてこないのだ。何となく空虚な印象を見る者に与えてしまうような気がする。その原因は多分俳優にある。俳優の力量というよりも、キューブリックの俳優の使い方だ。彼は俳優を二つのタイプに分けていたのではないかと思うのだ。自分の言うとおりに動いてくれる「お人形さん」。自分の想像を遙かに超えた演技を期待する「パートナー」。残念ながら、この作品の主演ライアン・オニールは前者だったようだ。もっとも、私が知る限り、後者になり得たのはピーター・セラーズだけなのだが……。
スタンリー・キューブリック リミテッド・エディション・コレクション(初回限定生産) [Blu-ray]
バリーリンドン入っていたので買おうと思いましたが、
※現在、『バリーリンドン』 と『ロリータ』 の単品ブルーレイ商品の発売予定はありません。
との、一文を見つけたのでボタンを押すのを躊躇しました。
うそばっかり、きっと発売されるよ。嫌な書き方だなあ。
別にね、1万円が惜しい訳ではありませんが本来欲しいのはバリーリンドンだけ。
付加価値と悪意の区別も付かないなんて、担当者が悪すぎる。メーカーさん、こんなひどい仕打ちをファンに行って大丈夫ですか??心待ちにしていたタイトルだけに残念でなりません。もうガッカリ・・
追伸
北米版のバリーリンドン単品(1700円前後)に日本語字幕が付くという噂を聞いたので取り寄せ中です。鑑賞後改めてレビューします。
8/30に到着して北米版バリーリンドン(単品販売)視聴しました。キレイな映像で日本語字幕が出ました。日本語で自動再生されましたので、今後日本版が発売されても同一のディスクが使われるものと思われます。
詳細はリンクしておきますのでご確認下さい! バリーリンドンファンの方にはとってもお勧めです!(二週間ほど掛かりましたが、送料入れて2000円くらいでした)Barry Lyndon (Blu-Ray)
更に追伸2012/3/31
物議を呼んだ上記の一文(※印部分)は削除されたんですね。
ほらみろ。
希少価値を煽るようなズルイ販売方法をとっておいて単品販売するのか?このようなやり方は止めていただきたいものです。お客を何だと思っているんだ・・
バリーリンドン [DVD]
アイルランドの農家に生まれたレイモンド・バリーが英国貴族として成り上がっていくさまを描いた一代記。「虚栄の市」のサッカレーの原作をキューブリックが映画化したもので、アカデミー賞の美術監督・装置賞、撮影賞、衣裳デザイン賞、編曲賞を受賞している。18世紀のヨーロッパがキューブリックの徹底したこだわりの中に描かれ、ストーリー以上に映像と音楽に圧倒される。
3時間を超える大作であり、全体として見ると決してサクセス・ストーリーではない。ある程度の我慢が必要な作品かもしれないが、断片的に見ると非常に面白く、惹きつけられる。ライアン・オニール演じるバリーは、初恋の相手である従姉妹を巡る争いがもとで故郷を追われ、七年戦争に参加して実力を認められたかと思うと軍隊を脱走してプロイセンの軍隊に身を寄せる。戦功をあげてプロイセン警察のスパイとなるが、二重スパイとして同郷の詐欺師と行動を共にし、欧州を回るうちにレディ・リンドンと出会って結婚し、社交界で成り上がっていく。
バリーはそれほど才覚に秀でているわけでもなく、その行動も行き当たりばったりなのだが、運命が彼を放っておかない。運命に身を任せて漂流していくところが、他力本願の私自身にとっても感情移入できるところで、彼の人柄には共感できないものの、ついつい彼の運命を追いかけてしまう。しかし、最後まで見終わったときにカタルシスは感じられなかった。出世欲は強いものの、そのために枠の中にはまるほど素直ではなく、自分が望んでいる立場を手に入れるために束縛されるというジレンマをバリーは生きている。そのため、成功したように見えても幸福感は感じられず、バリーの末路も描かれていないので、見る側としては最終的な「落としどころ」も見当たらないのだ。
さすがはキューブリック!と思わせながらも、徒労感がないでもない。