統計学を拓いた異才たち―経験則から科学へ進展した一世紀
余分なエピソードがずらずらと書かれており、結論は?と言われるとよくわからない内容ではありますが、読めば結構面白いです。
統計学が成り立つ(現在も進化中)までのエピソードを追ったもの。数式が出てきません。統計の教科書等の目次で見る項目について、どのような人がどのような考えをして、生み出されたのかが、わかります。登場人物は、基本的に論文を発表するため、論文に対する批判との戦いが多い。数学的な論理を要するため、論理矛盾を突いたり、証明したりするやりとりが多いです。統計学が積み上げられ、時が流れていく様子がわかります。
また、挿入されるエピソードが面白いものが多い。…ナイチンゲールは厳しい統計数字を用いで戦争現場における惨状を明確にした。第二次世界大戦中に日本が非鉄性の地雷を開発したため、計算をすると何十万人もの米兵の被害が想定されるため、原爆使用に踏み切った。…等。統計に纏わるエピソードとそれから登場する人物の活躍が描かれています。
今後、統計の勉強を続ける上でかなりのモチベーションアップにつながる本だと思います。
スターチャイルド SELECTION II
ふとした時に、少し古いアニメのテーマ曲を聴きたくなることがあるのですが、そう言うときにCDショップなどでその曲を探しても廃盤になっていることが多く、なかなか手に入れることが出来ません。
オムニバス盤というのはこう言う時便利ですよね。
アニメ本編を思い出したりながら聴いたり、見たことのないアニメの主題歌を聴くと、そのアニメも見てみようかという気にさせられます。
BLUE~A TRIBUTE TO YUTAKA OZAKI
世界中には、そのアーティストをリスペクトして、無数のトリビュート・アルバムがある。
このアルバムは、尾崎豊を様々なアーティストの解釈により演奏されている。 もちろん、よほどのことがないかぎり本人を超えるカバーなどはない。 それらを踏まえた上で、このアルバムを聴いてみた。
まず、Coccoのダンスホールからのスタートは重々しくなく良かった。 そして、須藤ディレクターの念願のミスチルによる、僕が僕であるために。桜井くんの世界観にあってて、とても良い選曲だったと思う。 そして、尾崎のロックンロール・ナンバーでは、かなりかっこいい路上のルールを、1994年頃に女・尾崎と呼ばれていた橘いずみの熱唱、これまたかっこいいです。
そして、詞の世界観と孤独感が一番、尾崎に近いと個人的には思う宇多田ヒカルの、I LOVE YOU。 この音源は宇多田の、ファースト・ライブからのものだが、これを歌っていたのが確か同じ17歳だったという事もあり使用したということだ。
あとは、まだ尾崎がデビューしたての頃に親友であった、岡村靖幸の太陽の破片、独特の表現方法です。
そして何といっても斉藤和義の闇の告白。難しい曲を、静寂の中ギター1本での熱唱は圧巻である。
アーティストとして、ラストの曲はマッキーの、Forget-me-not。これも槇原敬之が選びそうな曲である。
最後は未来に向けて… 須藤ディレクターの息子と尾崎の息子による、15の夜。
自然と涙がこぼれた。
これほどの、アーティストに影響を与えた尾崎豊。
やはり特別な存在で、彼がいなければ少なからず日本の音楽は変わっていただろう。
このアルバムは、いま世の中に、溢れているカラオケ・レベルのカバー集でない事だけは最後に伝えておきたい。
そして、天国の尾崎に届く事を祈っている。
はやぶさ/HAYABUSA デラックスBOX〔初回生産限定〕 [Blu-ray]
小惑星イトカワの試料を採取した探査衛星、「はやぶさ」のお話です。登場する人物が面白い、宇宙研究の予算取得のための経済的な厳しさでやりくりする職員、高学歴にもかかわらず非常勤職員として働く人、生活を犠牲にしながら仕事に打ち込んでいる人、志なかばで退職する人、病気で死んでしまう人がさらっと描かれています。多士済済とはこのことでしょう。こんな人々の集団だからこそ快挙、前例のない、世界初ということをやってしまうのだとも感じました。
探究心の塊、探究心に突き動かされ、ユーモアーがあり個性的な人物の集まった宇宙研のスタッフがいい。ある意味では美しく描いています。出演者の演技がいい。理系の人、「こういう人いるような〜」というぐらいうまく演技している。専門家集団を外側から眺めると、こういう感じに見えるのだろう。
そのなかでも竹内結子が扮する水沢恵がいい味をだしている。水沢恵は服装や化粧などは無頓着。経済的に厳しい様子が垣間見られるが、なに不自由なく生活をしています(夢を見ている生活)。興味のある対象には目を見開き驚きに満ちた表情で研究対象を追いかける。一方、日常では上の空で歩き、急になにかにぶつかりと動作がぎこちない。宇宙開発研究所では臨時の仕事にのめりこみ、子供相手の相談の仕事では場を読まず、困惑した表情の子供に専門用語で一方的に解説する。人への配慮とか女性としての色気も艶もあったものではない(失礼な言い方で申し訳ございません)。しかし、水沢恵は、はやぶさを通して職場の人とのかかわりを深め、家族に支えられ、自己を見つめ、人間的に成長していきます。やっぱり研究は知的な部分を尖らせるだけではだめなんだろうということも確認できます。この映画は水沢恵の学位を取得するまでの成長物語と読み替えてもいいのだろう。
さて、理系の仕事をしている人、日の目をみないプロジェクトXのような仕事でがんばっている人には感情移入し元気づけられる作品になると思います。お薦めです。
統計学を拓いた異才たち(日経ビジネス人文庫)
今から20年以上前に、日科技連の医薬品に関する統計の研修を1週間受けたことがあります。なかなかハードな内容でした。PC-9801を使って、Basicでプログラムを組んだりしていました。Fischerの直接確率など次元が上がるとお手上げで、もっぱらχ2乗検定を用いていました。
今では自分で検定したりすることはありませんが、当時の経験が論文などを読む時に「これは変」ということがわかったりします。
本書は統計学の様々なエピソードを数式なしに紹介してくれます。その背景がわかることで、「だからこの場合にはこの検定を用いるのだ」という理解にもなります。最近みかけるようになった「ITT(intent to treat)」という概念もすんなり飲み込めました。
数学と現実を結びつける最初の事例が紅茶婦人というのも印象的です(訳者は状況が違うかもとしていますが)。
以前、会社で新入社員研修をしていたとき、「5%の有意水準」を理解させる時には、「私は抛り上げたコインの裏表を自在に操れる」という仮説を示し、何回連続して表を出せば信じるかという方法を用いていました。
いずれにしても、一寸統計をかじった人間にはとても面白く読めました。