レコード芸術 2008年 04月号 [雑誌]
サンプルCDは、車で聞くのに適しています。
音質がいいですが、音楽に聞き入ることはできない状況なので、1局入っている必要もありません。
問題なのは、雑誌をちゃんと残しておかないと、この曲よかったので、CDを買おうと思ったときに、なんていう曲かがわからなくなることです。
レコード芸術は、このCDだけでも十分ものが取れる雑誌です。
僕と姉妹と幽霊の約束 (このライトノベルがすごい!文庫)
霊感体質の主人公クロと3人の姉妹、そして幽霊になった紫音の、揺れる心を描いた作品。
主人公を始め、全ての登場人物の動きと目的が最後まで一貫してない印象。そして読んだ後、頭の中にはてなマークがいっぱいになりました。
以下ネタバレ(説明しながらの記述のため長いです。すいません)
過去に両親を事故で失ったクロと3姉妹。
両親が幽霊として現れて再び失った時に感じた悲しみを繰り返したくないと、幽霊には一切干渉しないと誓って生活していました。
そこに現れたクロの友人、紫音の幽霊。体の弱い紫音は以前から入退院を繰り返しており、先日成功率の低い手術を行い、上手くいかなかったそうです。
クロは幽霊になった紫音の心残りを探すために3姉妹の力を借りて……という物語だったはずですが。
まず、クロも3姉妹もあっさりと幽霊となって現れた紫音を受け入れます。
100歩譲って、紫音に関してはクロのただならぬ思いがあったから受け入れた、と思おうとしても、その他まったく関係無い幽霊にまで普通に干渉している場面があり、「あれ、干渉しないんじゃなかったの?」と疑問が沸きます。
終盤近くになって、紫音の記憶が曖昧になり始めたのも唐突すぎて付いていけませんでした。
物語の8割以上を過ぎてから突然急に「自分が何者かも解らないの」と言い始めても、「さっきまで普通の人と同じような記憶を持って喋ってたのに、この人突然何言っちゃってるの?」と疑問が先に立ちます。
かと思うとちょっとした刺激だけですぐに記憶が蘇り、クロに自分の気持ちを詳細に赤裸々に語り始めます。
「あれ、記憶があやふやになる必要性無くない?もしかして無理やり感動させるための小細工?」と思ってしまいました。
最後のどんでん返し、紫音が実は生霊だったというのも、何か詭弁を弄されているようですっきりしません。
体の弱い紫音は手術が失敗してそのまま死んでしまい、何かの心残りのために幽霊になったというような描写をずっとしていたのに、実は死んでなくて眠ってるだけなんだよ、と言われても納得がいきません。確かに「死んだ」と直接は書かれてないけど…。
紫音が生きてるかもしれないという伏線もロクに無いまま物語が進んでたため、「今まで書いてた物語はお前を騙すためのフェイクだ、ざまあ見ろ!」と突然言われたような気分になりました。
さらに、序盤での話の中心であった紫音の心残りについて、彼女はそのために幽霊(生霊)になったわけではありません。
なんとクロの姉の力で無理やり幽霊にさせられていたそうです。しかもクロの依頼で!
「心残りがあるから幽霊になって彷徨う」という大前提がいきなり崩れてしまいました。「紫音は心残りがあったから幽霊になったんじゃないの?それをクロが探してあげるんじゃなかったの?あれ〜?」という疑問が沸きます。
要は、クロの親友の志郎が、死んだのに気付かないで迷ってるからそれを成仏させようとして、志郎の心残りである紫音の霊を利用した、という事ですが、わざわざ生きてる人の霊を呼び出してまで利用しないといけない必要性に強い疑問を抱きます。
しかも自分の好きな人の霊を呼び出してあれこれ利用しようとか、普通の神経の持ち主(霊感体質で、しかも霊には係わらないでいようと決意した人)なら考えないと思います。
つまり
「心残りがある→幽霊になってクロの前に現れる→クロが心残りを探す手助けをする→紫音成仏」
こういう流れではなく
「志郎が死んじゃった→志郎の心残りは紫音→生きてる紫音の霊を呼び出してそれをネタに志郎を成仏させよう」
という流れだったようです。
そして追い打ちをかけるようにここで最大の疑問が。
仮に「いつの間に志郎を助ける話になっちゃったの!?」という展開を許すとしても、序盤は明らかに「紫音の心残りを探す」という流れで、クロもそう明言してるはず。
心残りがあると幽霊になってしまい、成仏するためには心残りを解決しないといけないという前提と、序盤の流れを照らし合わせると、クロは紫音を成仏させようとしてたという事に。
そういや最後の感動的シーンっぽい場面で「逝くな」とか言っちゃってるけど、妹に叱咤されるまで「二人は一緒に成仏出来ると思ったんだ」とか言って志郎と一緒に成仏させようとしてましたよね?
つまり、クロは生きて眠ってるだけの紫音を成仏させようとしてたという事で、つまりクロは好きな人を殺そうとしてたってこと!?
なに?これって感動物に見せかけた殺人未遂の物語?
謎は深まるばかりです。
物語にどんでん返しは付き物ですが、それで全てがすっきり解決するのではなく、逆に矛盾点が増えてしまうのはいかがな物でしょう。
☆3つなのは、新人という事で将来性に希望、という点と、もしかしたら私の読解力が貧困過ぎて理解しきれてない可能性も捨てきれないから、という点で甘めにしました。
(普通に評価するなら☆2つが精いっぱい。さらに私が持ってる出版社偏見を入れると☆1つになります)
ブルーム
2枚目となった今作も,期待以上の素晴らしい内容に満足した。音楽の成り立ちを正確に理解し体現しながら,南紫音氏らしい落着きと輝きを兼ね備えたユニークな音も相変わらず魅力的である。
大げさな表情や誇張は一切なく,厳しく抑制のきいた確実な奏法で,造形も和声も正しく描きだされ,なんの心配もなく後期ロマン派の作品を堪能できた。R・シュトラウスやサン・サーンスのソナタをけれん味のない表現で自信を持って表現できるのは,相当な技量と見識がなければできないことで,これを二十歳の若者が成し遂げていることに敬意を感じた。自分の目で楽譜を研究し,確信を持って弾き切る素晴らしい演奏家であることが,この2作で十分理解できた。江口氏との相性も素晴らしく,今後もこの組み合わせて作品を残されることを期待している。
なお,本作も前作同様すぐれた録音で聴きやすい。
南紫音デビュー・リサイタル(初回限定盤)(DVD付)
日本の音楽家も世界に通ずるセンスがここまで見事に育ったのかと,感心させられる素晴らしいデビュー盤.モーツァルトは音楽家にとって試金石となる楽曲だが,その無理のないのびやかな演奏は,楽曲を徹底的に堪能できた.フレージングの呼吸が長く,息の長い旋律を一気に弾きあげていくやり方は,かつてのグリュミオーなどの伝統を思わせる素晴らしいものだ.
プロコフィエフも見事な把握で,理解の視点が広く高いことを実感させられた.特に第三楽章の幻想的な美しさと終楽章の集中力ある構築力は見事.
シューマン・イザイも素晴らしいが,最後のブラームスはこの若き音楽家の将来性を大いに期待せずにいられない,とりわけ見事なでき.
また,本盤は伴奏の江口玲氏の最高のサポート抜きでは語れない.ソリストにとって,バランスを完全に把握しながら音楽の構造を支えられるピアノ伴奏と出会えることは,大変な幸運に違いない.
さらに,録音が優れていることも特筆したい.
なお,付録のDVDはつまらない.画質が悪く粗雑なもので,いくら特典付録とはいえ,これほど価値の低いDVDも珍しい.あくまでもCD本編にのみ期待して聞くべき素晴らしいCDである.