皇帝のいない八月 [DVD]
現在はカルト的な人気のある作品だが、公開当時は山本薩夫監督にしては珍しく失敗作といわれ、興行的にもヒットしなかったと記憶している。
1978年の雑誌「シナリオ」に掲載されている脚本を読むと映画とは全く異なっている。山崎努の役は脚本段階では計画段階から登場し、渡瀬恒彦の相棒としてもっと重要な役だったし、三国連太郎は吉永小百合とは関係なく、最後はロボトミー手術はされないことになっている。吉永小百合の役は脚本でも映画でも不要だと思うが、脚本の方が純粋に政治サスペンスになっていたように思う。脚本のいい部分を殺して余計なエピソードや説明を入れすぎなんだと思う。作りようによっては新しいタイプの政治サスペンスの傑作が誕生した可能性もあったのに惜しい。
ただし映画の内閣情報室長・利倉を演じた高橋悦史は良かった。高橋悦史は山本監督の映画では、いつも印象的な役を演ずることが多い。吉永小百合の恋愛ざたや渥美清の特別出演(松竹の悪い癖)で緩んでしまった列車内の描写とは対照的に、政治家やフィクサーたちのドロドロぶりは面白かった。
吸血鬼ゴケミドロ [DVD]
血のような夕焼けの中を飛んで行く旅客機。
無気味に光る巨大な光体とすれ違った瞬間、計器は狂い、エンジンは吹き人里離れた山中に不時着する。
やがて、乗客の中にいた暗殺者(高英男)がスチュワーデスを人質に脱出を図るが円盤と遭遇し、額をザックリ割られスライム状のゴケミドロ本体が侵入し吸血鬼となる。
パイロットが救出したスチュワーデスはショックから記憶が飛んでいた。
乗り合わせた精神科医の催眠術によって、真相が解ると医者は崖から突き落とされて重傷を負う。
そこに吸血鬼と化した暗殺者がいたのである。
(ここは飛び上がるほど怖かった。)
一人、また一人と吸血鬼の犠牲者となってゆく乗客達。
高英男を倒してもゴケミドロは死ぬことはない。
本体が他の人間の傷口から侵入し、また吸血鬼となって人間を襲うのだ。
どうにか、窮地を脱し高速道路に辿り着いたパイロットとスチュワーデスは料金所の人物がミイラ化しているのを見て驚愕する。
(このミイラの額が割れているところをみると、全世界で同様のことが起こっていたのだと推測できる。)
ホテルでは死体の山、道路上ではクルマに乗ったままの死体と、もはや地球に生きた人間は二人だけになったとうかがえる。
頭上をあの円盤が通過し、円盤群が飛来し、やがて真っ赤になり月にように変貌した地球の描写で終わる。
小2の時、映画館で観て以来、私にはトラウマとなっている。
今でも深夜になると、どこからかゴケミドロが現れて血を吸いにくるのではないかとふと思うことがある。
余談だが、同時上映は「怪獣総進撃」(ゴジラ電撃大作戦)と「リオの若大将」だった。この三本が同じ日にインプットされたのは貴重な体験だったと思う。
ちなみに脚本を担当した高久進は多くのアニメや特撮作品も手がけていて、その手腕には驚嘆させられる。
「デビルマン」の「眠れる美女ゾルドバ」、「超人機メタルダー」などは一度見ても損はないと断言できる。
吸血鬼ゴケミドロ [DVD]
子供時代に観た怪奇映画というのは、その“恐怖のイメージ”が増幅され、記憶されている事が多い。この映画を観たのは10歳くらいの時、町内会の納涼野外映画鑑賞会であったが、とにかくスゴク怖かった印象がある。真っ赤な空に(タランティーノも「キル・ビル」でオマージュを捧げてました)、鳥が次々と機体の窓にぶつかり、鮮血が飛び散るオープニングから、殺し屋に異性人がボディ・スナッチャーする際の眉間がザックリ割れるシーンの痛さと気色悪さ、脱出不能の極限状況の中で吸血鬼が襲ってくる恐怖、高橋昌也、金子信雄、加藤和夫、楠 侑子ら新劇俳優たちのケレン味たっぷりの大芝居、金髪美女がいたぶられるお色気シーン、そして、どうしようもなくぺシミステックな結末と、当時TV「ザ・ガードマン」の納涼怪奇シリーズを観るだけでも大層怖い思いをしていたのに(笑)、と、観たことを後悔した反面、大人の映画の面白さが少し分かった気がしたものだ。今観ても、全編を流れるその異様なムードと緊迫感は相変わらずだし、ゴケミドロ役の高 英男が、犠牲者の生血を吸う時のカメラ・アングルは素晴らしい。時代を反映して、ベトナム反戦のメッセージが語られていたのは驚きだが。その一方でツッコミ処も満載だが、そんなお楽しみ(笑)も全部ひっくるめて、やはり、今作は、怪奇映画の名手として佐藤 肇の名前を記憶させただけでなく、その後のSF怪奇映画に影響を与えた傑作として、映画ファンなら一見の価値あり。
明石掃部の謎―神出鬼没のキリシタン武将 (PHPビジネスライブラリー)
明石全澄(掃部)についての文献も少ない中、よく調べられている。特に大坂の陣についての記述は詳しい。キリシタン大名として、どういう領国経営を行ったかが分からないのが惜しい。何故、明石掃部がキリスト教に入信したかももう少し掘り下げて記述されると文献としての価値が増すと思う。残念なのは、年表が付いていないことと、冒頭で小笠原権之丞との関係を書いているが、詳しく記載されていない。
皇帝のいない八月 [VHS]
新幹線〜とは出演者がかぶっているが、自衛隊によるクーデター(亡国のイージスなどに繋がっている)という何とも恐ろしいテーマである。自衛隊内で軍の用語が使われているのはどうかと思うが、防衛省への昇格、憲法改正、また日本人としての誇りなど、藤崎の演説には納得させられた。最後の爆破シーンも余計だが、しまいには全てを列車転覆事故で片付け、生存者を厳しい監視下におこうとする国家の恐ろしさも伝わった。むしろそちらが印象的である。