火天の城 (文春文庫)
安土城が現存していない事が非常に残念に思われますが、もし現存していたらこのような小説も成り立たないので、いたし方ありません。
この安土城に関しては非常に謎が多く、最近の大調査によってようやく分かってきた部分も数多くあります。その中でもビックリしたのが、その当時の城造りでは考えられない、幅の広いまっすぐな表参道などがあります。無駄を嫌い効率的なことを好んだ信長がどのような意図を持ってこの城を建てたのか、そしてその信長から城造りを命じられた番匠たちのロマンが本書で蘇ります。蛇足ですが、現在でも安土城の天守(安土城に限ってだけ「天主」と書く)の構造や規模に関しては各研究者によって意見が異なるようです。今最も有力なのは大きな吹き抜けを持っていたのではないかという説ですが、本書ではそれを覆す説を説いています。それは、本書を読んでのお楽しみです。
命もいらず名もいらず_(上)幕末篇
勝海舟が成し遂げたといわれる江戸の無血、無火災開城は本書の主人公、山岡鉄舟がお膳立てをしたという逸話を収録し、西郷をして「命も名も要らぬひとほど、始末におえぬ」と言わしめた鉄舟の半生を上巻で描く。浅利道場での死闘など見所がたくさん。
利休にたずねよ (PHP文芸文庫)
「侘び」についても、むしろ茶道についても全く知識のない自分にとっても、かなり衝撃的な後味だった。侘びというと、勝手ながらくすんだ茶色みたいなイメージを持っていたので、この作品中の利休の燃えたぎるような情熱や執心はかなり興味深い.
仏教の中で、人に道を謝らせる「三毒」、むさぼり、いかり、おろかさについて、利休が「肝要なのは、毒をいかに、志にまで高めるかではありますまいか。高きをめざして貪り、凡庸であることに怒り、愚かなまでに励めばいかがでございましょう。」という言葉は心に留めておきたい.