ぼくらの☆ひかりクラブ 下[中学生篇]
退廃や耽美の世界ではいらない子なはずの青春少年タミヤを主人公として成立させちゃう技量に感服。
前作ではゼラの狂気を引き立てる為とか常識の代理として
「普通の良い子」を描いたのかなと思っていたのですが
もちろんその役割は重要だとして、
起きた出来事に対して人間的な反応をするタミヤのお陰で混沌とした物語に筋が通り、
ガロ系と呼ばれる作家が陥りがちな「奇妙なだけ、勢いだけの作品」から逸脱した傑作になってると感じました。
耽美、退廃、猟奇、社会、恋愛、友情、
哲学、青春、笑い、SF、BL…等々
これだけたくさんの要素をひとつの作品に込めて破綻させないって凄い。
映画、小説業界含めてもなかなかいない、本物の天才だと思います。
マボロシの鳥
想像していたよりもかなり良い内容だったと思います(少なくとも中学生の作文うんぬんでないということは、最初の数ページで分かりました)。
ただ、二つだけどうしても納得いかなかった箇所が。
一つは表題作「マボロシの鳥」に出てくる「言葉でいったいどれだけのことが伝わるのか」というところ。
それは太田さんが、普段からメディアで口にしていることでもあります。
わたしは小説という媒体を使って太田さんがそのことにどう向き合うのかを、楽しみにもしていました。しかし、じっさい今小説では「言葉」を使ってそのことを表現していただけでした。
それでは、この小説は言葉を使った最高峰の物でしょうか? わたしの個人的な感想では、世の中にはもっと感動でき、考えさせられる小説はたくさんあると思います。今の太田さんよりも、言葉を使ってより多くのことを他人に伝えている人が実際にいるということです。
そして二つめ。それは「人類諸君!」という短編です。
ヴォネガット風のSFを、講談調に著しているのですが、正直ギャグが笑えないのです。
もしかしたら、素人には分からない意図でわざとなのかもしれません。
マボロシの鳥のメタ的な部分も、語り口は談志さんのエッセイぽいのですが、なぜか笑えないのです。
談志さんのエッセイはふしぶしにユーモアがちりばめられて、読んでいる最中はニヤニヤしっぱなしです。もちろん小説とエッセイは違うのでしょうが、芸人太田光である以上、もうちょっと笑いにもこだわって欲しかったなとも思います。おそらく、談志さんよりも太田さんの方が読書量は多いと思いますが、文章でも談志さんが面白いのは何故なのでしょう?
太田さんは小説を書くなら、それを現実経験の差ということにはしないでもらいたいです。小説は生まれてからずっとベッドの上で生活せざるおえない人でも、その人の精神だけは宇宙の裏側まで飛ばす力があると思うので。戦争を体験しないと本当の戦争が分からない、は文学で克服できるんだという気概を、太田さんの次回作に期待しています(できれば固有名詞をぼかさない長編で)。
最後に良かったところも。
やはり、本が好きだと言うところ。ただのパスティーシュや、知識のひけらかしではなく、こういう本が好きなんだというのが伝わってきたので、この本をきっかけに元になったであろう本を手に取る人が増えるんじゃないでしょうか。本から本に繋がっていくという、本好きになるきっかけとして最高のことが表現されていたのだと思います。
Dramatic CD Collection 淫らなキスに乱されて
『淫らシリーズ』第2弾。
この作品は、ヤメ検弁護士の中津(cv:置鮎龍太郎)とフリーライター藤原龍門(cv:森川智之)の話。
この二人で(攻:森川さん×受け:置鮎さん)のパターンがちょっと新鮮。逆は聞き慣れてるけどねぇ。
置鮎さん受けを聞くのは久しぶりで嬉しい。
基本クールビューティーですが、幼なじみの上条への恋情を消しきれないまま、りゅーもんとの恋に落ちていく戸惑いをいじらしく演じています。
幼なじみ3人組の検事の上条(cv:鳥海浩輔)警官の高円寺(cv:小西克之)との絡みがこのシリーズの魅力です。
テンション高めで楽しいところと、温かい心の結びつきにジーンとくるところがあってどちらも魅力的です。
本編の事件がらみのシリアスな話だけでなく、原作では陸奥さんの巻末マンガになっているショートも入っていて楽しいです。
上条と高円寺にいじられているりゅーもんが可愛いです。
上条(鳥海)と高円寺(小西)に頭の上がらない年下のりゅーもん(森川)という構図がなんとも面白いです。
鳥海・小西・置鮎が同級生という強引さ。結果、森川さんが一番年下の役っていう意外性。置鮎受けという最近では貴重。
という、聞く価値が満載の1枚です。
キャストは他に、上条の恋人の神津に福山潤さん。太田哲治さん・成田剣さん。
このメンバーでフリートークがないのがちょっと残念。
3作目の『淫らな躰に酔わされて』も秋にCD発売されます。
新キャラ高円寺のお相手の遠宮太郎には笹沼晃さんだそうです。どんな女王さまっぷりでしょうか?
フレンチ・コンポーザーズ
レコード芸術 特選盤に選ばれたものです。したがって間違いなしの☆5つです。それだけ信頼ありますよね、特選盤って。ピアニストも江口さんやら作曲者の林光さんやら・・・色々な方が担当していて贅沢でありつつ、全体の統一感もバッチリ!な作品です。荒川さんの技術の深さもよく表現されています。