山水悠久―障壁画の世界
日本を代表する東山魁夷の障壁画の画業の全てを収録した画集です。
収録されている作品は、唐招提寺御影堂障壁画、東宮御所壁画、皇居新宮殿長和殿、山種美術館、長野県信濃美術館・東山魁夷館、宮内庁用度課にある壁画ですので、普段実際の作品と対面するのは難しいこともあり、このような出版物は貴重だと感じました。
東山魁夷の素晴らしい日本画を鑑賞してきた方には、その延長線上にある大きな作品群だということを理解されるでしょう。障壁画というと建物とセットの作品ですが、建物の大きさや広さに負けない雄大なテーマを扱っていますので、圧倒的な迫力となって読者に迫ってきます。
自然界の息吹を絵画に表す場合、画家の心象風景というプロセスを経て、再構築して提示されるわけで、その過程において余分なものをそぎ落とし、シンプルなモティーフとなって絵画という形になって具現化されます。
東山魁夷の作品が多くの方に愛されるのは、シンプルでありながら明確な再現性に優れているのでしょう。色彩も美しく、深い精神性をたたえた日本を代表するような障壁画でした。鑑賞用として画質もよく、作品の素晴らしさを理解できる仕上がりだと思いました。