百物語 第6夜―実録怪談集 (ハルキ・ホラー文庫 ひ 2-6)
第六弾です。
今回は,「見える人」ごとに章立てをしているのが特徴です。
「見える人」は,好むと好まざるとに関わらず,怪異に巻き込まれてしまうようです。もっとも,彼らのおかげで,われわれ読者はしばし異世界に遊ぶことができるのですが…。
最終章は,特定の人ではなく様々な人の体験を集めているのですが,著者を含む体験談である「う○こ」ネタが面白い!
客観的・事後的に考えても説明がつきにくい出来事で,かつ当人たちも恐怖を感じているのですが,本書から目を上げて冷静になってみると,「う○こ」ネタに不思議さや恐怖を感じている自分が著者の術中にまんまと嵌ったことに,はたと気づきます。本書を読んでよかったと(自虐的に)感じる瞬間とさえ言えます。
次回作にもサプライズがあれば,うれしいです。
義経になった男(三)義経北行 (ハルキ文庫 ひ 7-5 時代小説文庫)
義経の影武者となった笑氏の青年、沙棗を主人公にした歴史長編モノの第三巻。頼朝に疎んじられ、追われる身となった義経は北へ、奥州へと逃げるのだが、相変わらず正気を失った状態。そんな中で頼朝は...
物語の大転換を迎えるこの第三巻。いよいよ義経と彼をかくまう奥州討伐に乗り出す頼朝。そんな中で、正気を取り戻した義経は、自分がしたことの重大さに気づき、腹を切る。義経を失った、彼の影武者である沙棗は、義経として生きることを決意し、奥州藤原氏の面々は、奥州の民を守るため、滅んでいくことを選択するのだった...
物語は、義経の悲劇から、さらには奥州の存亡の危機へと展開する。奥州制覇の欲望にまみれながらも、義経の影に怯える頼朝とこの世の浄土ともいうべき奥州を、そしてそこに住む民の平穏な生活を守るために、知略を尽くして、いさぎよく滅びようとする奥州藤原氏の対比が見事。彼らの生き様、死に様がいきいきと描写されている。
百物語―実録怪談集 (ハルキ・ホラー文庫)
教師という経歴を生かした学校での怖い話や、趣味の釣り&キャンプ場での怪など満載。すごく新しいことはないけど、注目すべきは次の2点。
1.都市伝説的「友達の友達がうんぬん」といった伝聞を退け、全て著者および友人の実体験を載せていること。著者まえがきにもあるとおり、これが成功して異様な臨場感ある語り口となっている。
2.「百物語」をタイトルに冠した類書の多くと異なり、本当に100話載せていること。類書は百物語の能書き、「百話語り終えると怪が起こる」ということで縁起をかつぐのか読者への配慮か、はたまたネタの節約か(これが一番ありそうだが)40~60話、または99話(呪いとかでは回数が99で満願なのに、大丈夫なのかなあ?)で済ませているのが普通なのに、本作はきちんと100話載っているのだ!ガッツがあるなあ。著者の言にもあるとおり、厳密に数えれば100話越えてしまうほどいろいろな話が載っているのであった。
巻末には、霊感編集者&著者と大迫純一の祟りつき対談集が収録されていて、そっちもコワ~。お札もちゃんと付いてるよ。