林芙美子 巴里の恋―巴里の小遣ひ帳、一九三二年の日記、夫への手紙 (中公文庫)
林芙美子 巴里の恋―巴里の小遣ひ帳、一九三二年の日記、夫への手紙 (中公文庫)
この作品は、巴里の小遣ひ帳(1932年巴里・倫敦・東京での日記と夫への手紙)である。帰りの費用も持たずに片言のフランス語しか喋れない林芙美子が巴里に行った度胸にまず驚き、私は、その10年前に渡仏した小松清の姿(白亜書房「ヒューマニストの肖像『小松清』」)を想起した。彼女の日々のやりくをする苦労が小遣ひ帳として丁寧に記録されている事、更に人との出会いが記録されていて大変興味深く夢中になって読んだ。そして彼女が出会った人の作品に触れたり調べたりと世界はどんどん広まった。どの人も日本の文化人として有名でその横顔が素に林芙美子の言葉で書き添えられていることが最も魅力的である。