魯山人陶説 (中公文庫)
私は魯山人の好みが好きだ。
友人である青山二郎は魯山人の発言を皮肉るが、
彼も魯山人の真意はわかっている。
「現代と言う時代が汚いから、芸術作品も汚くて良い」等と言う人間は
魯山人の言うところを、よくよく噛み締めた方が良い。
ちなみに、私は永井荷風も好きなのだが、
「美味しんぼ」の雁屋哲氏も荷風が好きなようである。
青山も白洲も「全てが良いと言うわけではない」と言っている通り、
書などは、ずば抜けて良いと言う訳ではなく、
私は何気ない小物などが一番好きなのだ。
即興で描いたクロッキーなども本当に美しい。
現実に妥協するのではなく、「美的生活」を大事にした魯山人を、
日本人は大切に思わねばならない。
彼に学ぶ所の重大さは、少しも色褪せない。
魯山人味道 (中公文庫)
日頃グルメ雑誌やブログを見ていて「?」と感じる事が多い。絶賛されている店が案外美味しくなかったり、有名人が通っている店でもたいしたことなかったり。常々疑問に思っていたが、魯山人の本書を見て納得「東京人の舌は杜撰である(中略)だから東京好みは俗になりやすいのである」これだ!!!
私は西の育ちなので、京都と東京を両方知る魯山人の意見にはいちいち同意を禁じえない。ましてそれを戦前(昭和ヒトケタ)の時点で喝破していたのだから恐れ入る。もしも存命であれば、是非とも弟子入りしたかった。。。と思うほどである。但し全編にわたって一方的に東京人を貶めているわけではない。きちんと評価すべき部分は本書で評価されている。要は「東京がナンバーワンと思うのは大間違い」ということである。
本書の記事から戦争を経て70〜80年が経過し、東京人も3〜4代を迎えていることだろうが、果たして舌は進歩したのであろうか?
答えは否であろう。本書の著された時点で、魯山人は既に手抜き料理や素材を破壊する自己流料理、農産品の粗製乱造の風潮などに警鐘を鳴らしているが、現在益々その風潮は強い。おまけにそれらの良し悪しも充分に審査せずツイッターやブログの垂れ流し。
食が豊かになり、情報も比例して氾濫している今、彼の書を刮目して読むべきだと思う。特に飲食店経営者・三流ブロガー・自称グルメレポーター・自称グルメ雑誌の編集者は深く反省するべき部分が多いと思う。是非彼らには一読してもらいたい。