手毬寿司 小料理のどか屋 人情帖4 (二見時代小説文庫)
シリーズも遂に4作目に突入
今回も連作短編形式的な構成ですが、かなり長篇的な話の流れとなっていました
その為、今までの作品より読み応えがありました
江戸を襲った大火
それに巻き込まれた「のどか屋」及び周囲の人々の様子が描かれる
色々と取り巻く状況が変化し、シリーズにおける大きなターニングポイントとなる作品だったと思います
凶鳥の黒影 中井英夫へ捧げるオマージュ
ぐっときてしまうわけですが。
恩田陸、笠井潔、菊池秀行、北村薫、長野まゆみ、三浦しをん、山田正紀(敬称略)の七人はエッセイ、他の方々が短編を書かれています。
この中に誰か一人でも好きな作家がいるなら、読んで損はないと思います。
中井作品がまさに〈永遠の呪縛〉たりえることがうかがえる本でした。
三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人 (講談社ノベルス)
この作品を読むことができるのは、日本人の一つの幸せだと思います。
極めて特異な作品であり、誰にでも勧められるものではありませんが、これは、ある意味で、歴史に残る名作だと思います。
ある男が黒鳥館に招かれて小説を読んでいるという設定で、全八章の私家版「三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人」に、二章ごとに「幕間」の章が挿入され、最後に全体の謎解きがある構成になっており、「四神金赤館銀青館不可能殺人」を手本に「紙の碑に泪を」の変奏を試みたような塩梅です。
その数において、ギネス級の伏線が張り巡らされ、しかも、推理を組み立てるまでもなく、そのまま「答え」が示されているにもかかわらず、ほとんどの読者には、解決編までその意味が判らないでしょう。
伏線となる事柄を読者に印象づけながら、その意味に気づかせないことは、本格ミステリの骨法の一つです。しかし、着想のあまりの馬鹿馬鹿しさゆえに、読者に伏線の意味が判らないという作品は、多くないと思います。
信じられないほどの労力を費やして、こんなとんでもない作品をちゃんと完成させた作者には、心底、感服しました。