オールド・マジック
「懐かしい魔法」か「年寄の魔法」か「老嬢」(oldmaidish)とのひっかけか?ジャケットの意味は良く分からないが、内容は大変素晴らしいものである。これはもうニック・ロウミュージックとしか言いようのない域に達しているように思える。 1曲目アコースティツクで美しい「赤信号の薔薇」は〜昔のやり方で今は切り抜けられない〜人生が続く限りこれからも覚悟を決めるとの決意宣言である。2曲目は軽妙な〜僕はもう61歳〜で始まる「チェック・アウト・タイム」。人生の終わりが近づていることがテーマだが全く重くない。3曲目「家売ります」は『マック・ザ・ナイフ』の「ハート」の雰囲気をもった静かな名曲である。〜相手がいない一人の家は刑務所のようだ、家を売って出て行こう。〜結局人間は最後は一人になるのだという厳しい現実=「老齢の孤独」がテーマだが逆にニック節全開である。4曲目は一息入れて、コミカルなオルガンブギー「繊細な男」。5曲目「本を多く読む」こそは古のスタンダードを髣髴させる本アルバムのハイライトである。〜本の多読は「孤独」「憂鬱」を紛らわすためだ〜との人生の正直な告白だ。1980年ロック・パイル『セカンド・オブ・プレジャー』の「本を書く時」へのアンサー・ソングであるようにも思える。逆に本を書くのは若くて高揚した時期だと。 以下6曲目「この雨は無礼な奴」は渋いカントリー風。7曲目「落ち着かない感じ」はマイアミ・サンバ風の軽快なナンバーだが、まだまだこんな作曲の引出しがあるとは。8曲目「毒入りの薔薇」はコステロ作のバラードだが、さすがに師匠だけあってコステロより歌が上手い。9曲目は相方であるグラント=ワトキンスが前面に出たノリの良いオルガン節「誰かが好いてくれるから」。10曲目はアメリカのシンガー・ソングライター、ジェフ=ウェストのカントリー風「全然僕を分かってない」。他人の曲が3曲続くが全く違和感がない。最後11曲目が英国60年代初頭のジェリー & ザ・ペースメーカーズ風の「本物が現れるまで」で終わる。
歌詞は単純だが滋味があり、音楽同様の深みに達している。これはもう対訳のある日本語版をお勧めする。アメリカ・アマゾンで「年々英国らしさが希薄になる、アメリカ市場に寄り過ぎ。」と「アルバム製作中にドワイト=ヨーカム(モダンカントリー・シンガー・ソングライター、グラミー賞2度受賞)を聴いていたのでは。(=英国人なのにカントリー風はやってくれるなとの意味か?)」との批判がある。比較するに本アルバムは、やはりアメリカのロックとは言い難い。またドワイトもニックほどの表現の深みには達していないと思える。英国ロックの一つの到達として本アルバムを支持したい。
ベスト・オブ・エルヴィス・コステロ
コステロ氏初心者です。
なのでpopularな「She」と「Smile」がほしかったのですが、両方入っているアルバムはなかったので、「She」をとしました。やっぱりいいですね!週末に家事をしながら歌いまくりです。
緑色のジャケットの輸入版とどちらにするか悩みましたが、最初は日本語解説がほしかったので、こちらにしました。
輸入版より曲数が少ないですが、初心者としては適量です。
コステロ氏のことも分かりました。
☆ひとつ差し引いたのは、前述の通り「Smile」もほしかったからです。
Painted From Memory
コステロの声は人によっては好みが分かれるようなところがあると思います。実際、過去の作品においても個人的にはちょっと湿っぽい声がしつこく感じられることもたまにありました。
し・か・し。
このアルバムほどこの声がぴったりくる作品はないでしょう。
聴けば聴くほどバカラックのメロディーがなじんできます。
映画の挿入歌となった♪She 路線ですが、あれよりずっといい曲で捨て曲なしの奇跡のようなアルバムです。
是非第二弾を期待したいけど作らないだろうなぁー
シェイン-ザ・ポーグス:堕ちた天使の詩 [DVD]
ポーグスのフロントマン、シェインマガウアンの半生を描いた’01年のドキュメンタリー作品。シェインファン必見の作品である。
映像や本人の発言を通して狂信的ともいえそうな愛国心、アイリッシュとしての強烈な誇りが見て取れる。そして両親等の証言を通して、生まれ故郷アイルランドでの生活、移住したロンドンでの挫折、精神病院への入院、ついには12歳のときドラッグ使用により退学しなければならなかったことが明かされていく。そして彼はパンクの世界へ入っていくのだが、それは同じアイリッシュであるジョニー・ロットンによる反英感情の強い歌の影響だったと明かされる。
シェイン・マガウアンはアル中でトラブルメーカであるが、彼の書く作品は不良のおとぎ話のような詩とアイリッシュフォークを基調とした曲による美しいものである。この作品で彼の半生を知った後の感想は、まさに『堕ちた天使』シェイン・マガウアンである。今度はポーグスの曲をボリュームを落として聴きながら、もう一度見ることにしよう。
エルヴィス・コステロ ウィズ スペクタクル! ロック・ライブ&トーク [DVD]
全回演奏される曲の数は、3、4曲前後です。ですので、見どころは、トークです。すべてとても興味深かったです。もちろんやはり、コステロが雄弁で、饒舌なので、飽きません。しかし、スモーキー・ロビンソンが人種に対する差別、偏見が不当であることを力説するくだりでは、すべてを察して黙ってそれを聴いているコステロの表情がいちばんかっこよかったです。内容を楽しめれば楽しめるほど、視聴後、調べて、各出演者のCDを買いたくなります。コステロはそういう仕事をしています。再生機器だけではなく、それなりのお金を用意して見てください。
ただし、残念なことがひとつ。字幕は、おそらく「ゴスペル・ソング」を「聖歌」と訳すなど、最近の日本の音楽ジャーナルの訳語、術語を知らない人間によって制作されています。その点、日本語字幕だけではなく、英語字幕もつけてほしかったですね。よって、星一つ分減点。
7以降は、7ルーファス・ウェインライト、8ジェイコブ・ディラン、ジェニー・ルイス、シー&ヒム、9ダイアナ・クラール、エルトン・ジョン、10ハービー・ハンコック、11ロザンヌ・キャッシュ、ノラ・ジョーンズ、クリス・クリストファーソン、ジョン・メレンキャップ、12ジェイムス・テイラー、13ルネ・フレミング。50分のインタヴュー(コステロ、エルトン、スティング、ルーファス、キャッシュ、スモーキー)。4曲のボーナス曲。8で自分の伴侶・ダイアナ・クラールがメインになる回だけは、職権乱用を防ぐため、エルトン・ジョンが司会を代行します。