魂のジュリエッタ [DVD]
イタリアの大監督フェデリコ・フェリーニが、妻の大女優ジュリエッタ・マシーナを主役に、夫の浮気について悩む妻の心を、この監督さんの得意の幻想的サーカス的映像で、これでもか状態に見せる映画です・・・
フェリーニという監督さんはその数々の映画の特徴を見ても、幻想的なイマジネーションを(特撮でもなく、もちろん今のCGでもなく)演劇的にセットや衣装やメイクで、まるでサーカスのように見せてくれる人ですが、頭の中がそういうイメージでいっぱいにあふれるような感性の持ち主だと思います。生前イタリアの大使館だか、そういう関係の場所で、フェリーニのスケッチ風の絵、映画用の絵コンテなどの展覧会を見たことがありますが、実に上手で、センス良く、イタリア人らしく、色がきれいで線がセンスの極みを感じさせ、しかもダイナミックさとユーモアがあふれた絵の数々で、感心しました。
このように、感性豊かな人は、きっと様々なことを感じ取って、その美や魅力や個性にいちいち酔いながら生きているのだと思うのですが・・・そういうのは、この世を生きていくのに、ちょっと不都合なものです。もっと安定して、感性をあそばせるのはいいけど、ほどほどにしておく、という地に足の付いた、愛のある視点を持っていないと、あふれるイマジネーションに振り回されては不安で生きられるものではありません。たぶん、フェリーニの妻、ジュリエッタは、その辺を大変堅実に暖かく、判断し行動できる人なんだと思います。容姿は人を惑わすような美女、というのではないし、どちらかというと、信頼できる先生、という存在感です。なので、フェリーニにとって、ジュリエッタの存在は、ほんとうに生きていくうえで欠くことのできない、頼りの道しるべ、フラフラと感性の赴くままに冒険した後の、帰るべき港、のような存在だったのではないでしょうか。
そして、どんなによその美女の色香に惑わされ、人間の感性のジャングルに冒険しさまよって味わったとしても、そんな冒険好きの少年が疲れて帰ってきたのを暖かく迎えてくれる、母親のような妻、が、俺は、こんなに愛されているんだ、と自慢だったのではないでしょうか。こんなに素晴らしい、中身のある女性を所有してるんだ・・・なんて。
だから、そのジュリエッタが観音様のように何の迷いもなく、存在しているのでは面白くなくて、こんなに自分の冒険(夫としての浮気も含む)に、やはり妻として女性として、悩み苦しみながらも、やはり自分は貞淑なまま、夫を待つんだ、という、そういうのを、これでもか状態に描いて!それを妻に演じさせた、という・・・才能ある、しょってる男のやりたい放題、の映画である、と私は見ました!
ジュリエッタは派手な美女ではありませんが、髪もメイクも衣装も、とてもとても美しく、撮られています。
そして映画の中で、どんなにできた女ジュリエッタでも、夫の浮気の疑惑にとても苦しめられます。
夫の浮気、とは、妻と離婚する気がない以上、気晴らし、現実逃避の夢、ロマン、本当は何人もの女と恋をしたい・・・というような男の本能であるのでしょう。
しかし、フェリーニの理想の妻ジュリエッタは、自分がだからと言って浮気し返す気にもなれず(差し出される幻想の浮気相手の男のイケメンなこと!!!現実離れ、この上ない!!!)、かといって夫の浮気旅行にはつらい気持ちを抱きつつ、責めたりもせず、悟りの境地にいたったのか、にっこり笑って美しい、夫がいざとなったら帰るべき整った家のなかに、彼女は住んでいる、ここからは出ていかない、というイメージで終わるのです。
ジュリエッタとフェリーニの夫婦は、実際離婚した、というので、やはりできた女ジュリエッタにとって、つらいと感じる気持ちはあったのでしょう。でも、男としての意地を大監督としても主張しつつつも、安定した暖かいジュリエッタが必要であったフェリーニにとっては、彼女なしでは結局不安であったでしょうし、頭のよい暖かいジュリエッタはそれを理解して、最後死ぬまでフェリーニには寄り添ったのではないでしょうかねー
あんまり冒険が過ぎる夫を持つのは、やはり妻も弱い人間である以上、しんどいことでしょうねー
でも、夫が離婚を望まない以上、男は冒険したくなるものだ、と少しは割り切る必要があるでしょう。その中でできる範囲で夫を愛せれば、妻もよい人生を送ったことになると思います。
この映画でのフェリーニの幻想的描写は、面白いのですが、意味としては妻の葛藤、ですから、多すぎるなー、と思う時もありましたが、やはりその映像つくりが美術的に見飽きないのと、やはりこのくらい描くくらい、妻の苦しみは大きい、ということだ、と思うと、まあ、軽くは扱えないなー、と思ってみたりしました。
60年代の映画であるため、色やファッションや、当時はやっていたらしい降霊の集まり、とか、私の好きな美しさや興味、でした。また、これぞイタリア美女、のシルバ・コシナ、味のあるヴァレンティナ・コルテーゼを見れたのも、うれしかったです。
魂のジュリエッタ [DVD]
フェデリコ・フェリーニ監督ととって初めてのカラー作品であるばかりでなく、幻想的な世界に主人公が入り込んで行く独特の作風を確立したという意味で、この監督の転機となった作品です。また、自分達夫婦のプライベートな部分を描いているという点では、前作「81/2」と対をなす作品でもあります。実際、この映画の撮影中、フェリーニ監督とジュリエッタ・マシーナは別居してしまい、イタリアの民法が改正されて離婚が自由になった1971年に二人は離婚してしまいました。(それでも、女優と監督という二人の関係は、その後も続きましたが。)私生活を題材に芸術作品に作り出してしまったフェデリコ・フェリーニ監督はやっぱり凄いです。
ジンジャーとフレッド [DVD]
映画音楽家のニーノ・ロータが亡くなり、コンビを組めなくなって以降のフェリーニ作品は、評論家の間では、あまり評価が高くありません。しかし、この「ジンジャーとフレッド」は決して悪くない作品だと、私は思います。
「道」や「カビリアの夜」などに出演し、フェリーニの妻でもあったジュリエッタ・マシーナと、「甘い生活」でおなじみのマルチェロ・マストロヤンニが、実はこの作品で初共演したということも、フェリーニ・ファンとしては注目したいところですが、それよりも何よりも、お話が心温まる内容なので、観終わったあとにじんわりとした余韻を味わえる点が、この作品の素晴らしいところだと思います。画質も充分に満足できるレベルなので、ストレス無く鑑賞することができます。
定価が少々高めに設定されていることが、消費者としては残念なところですが、このメーカーから発売されるDVDは、総じて低価格になりづらく、廃盤になりやすいので、もしも興味のある方は、品切れにならないうちに購入を検討されることをお勧めします。
魂のジュリエッタ [DVD]
ジュリエッタの小さくて可愛いその姿。
カラフルでとってもラブリーな洋服の数々。
リアルなのに幻想的な建物やインテリア。
フェリーニ映画おなじみの、1度見たら忘れられないヘンな顔の人たち。
全部好きで何度見ても顔いっぱいの微笑が浮かんじゃう!
スーパー美女サンドラ・ミーロ様のゴージャスそのもののお姿と
悪魔みたいにお下劣な笑い声には頭の芯からシビレます!
生きてる喜びがこみあげてくる、
とってもステキな映画なんです。
必見!!ゼヒ!!