ショパン:ワルツ集
リパッティといえば、ショパン。普通に弾いて、すばらしい演奏になる。卓越した感性と技術の証明です。ショパンを習うときに、教科書にできそう。わざとらしさも嫌らしさもない、技術をちらつかせることもない、でも本当にしっかりした演奏です。練習量と感性と技術を感じさせないで、普通に淡々と優しい音楽にしてあります。最高のショパンです。
ブザンソン音楽祭における最後のリサイタル
音質は録音年代を考えれば妥当。演奏は強靭な意志を感じさせる正確さで音符が流れていく。しかしそんなことよりも、このCDに関して言っておくべき事がある。
私がこのCDを買う動機となったシューベルトの作品90の2。昔出た盤では、最後の音が長く伸ばされ、拍手が重なっていた。それが、このCDではものの見事に削られているのである。
おそらく、他の曲も同様な仕打ちを受けているのだろう。
最初の拍手を入れる位なら、なぜ元の録音を完全な形で再現しなかったのか。作品の一部の音よりも、演奏前の拍手が大事だというのか。
あまりにぞんざいな扱いに、リパッティもあの世で嘆息しているだろう。
ディヌ・リパッティ 伝説のピアニスト夭逝の生涯と音楽
夭折のピアニスト、ディヌ・リパッティについて、ブザンソンのコンサートに関する記録は目にしていたが、その生涯全般については、中々これまで知ることができなかった。その意味でもこの本は待望の一冊。ブザンソンのコンサートの後亡くなるまでの2ヶ月の記録を初めて知ることが出来たことも興味深かった。「音楽の忠実な使徒」として永遠に語り継がれるべきリパッティについて是非一読していただきたいすばらしい作品。
J.S.バッハ : 主よ人の望みの喜びよ ― 小品集
リパッティのバッハに対する理解と愛情の深さを窺い知ることの出来る演奏でした。
とくに「主よ人の望みの喜びよ」は、明晰な精神に裏打ちされているしょうが、それ以上に作品に対する敬虔さを強く感じさせられました。
こんなかけがえない記録が時代を超えて私たちに届くことに感謝したいです。
Icon: Dinu Lipatti
完璧な技術を持っているが、それを全て音楽の自然な流れと歌に注いでいる。
ブザンソンライブのライナーにも書かれているように、決してヴィルトォーゾではない。
かと言って職人性も感じないし・・・彼から感じるのはただただ音楽そのものである。
あえて言うなら詩人というのがしっくりきそうだが、それも躊躇われるほどの崇高さ。
自己の表現はほぼしなかったけども、唯一無二といって差し支えない。まさに偉業と言える。
しんどい時は、必ず彼のバッハを聴きながら眠りにつきます。
音楽好きでこのセットを買わないという選択肢はありません。