陽炎の辻 ~居眠り磐音 江戸双紙~ DVD-BOX
主演が山本耕史ということで、土方のイメージを引きずってしまうのではないかと思われましたが、やはり本物になってきたなと、はっきり感じる程に、素晴らしい演技を見せてくれています。殺陣のシーンも、ただ殺伐としているだけではなく、そう生きざるを得なかった者達の悲哀を引き受けて生きる磐音の心情が伝わってきます。
江戸の市井の人々の温かさ、そして、演技派の役者が様々な色合いで出演しています。
この作品は、今、何かを静かに伝えようとしている。本当に久々に胸が温かくなりました。
春の珍事 (ハルキ文庫 さ 8-38 時代小説文庫 鎌倉河岸捕物控 21の巻)
今回のお話は旗本の次男坊と金座裏の飼い猫「菊小僧」の失踪(?)がメインです。
次男坊の方はまあ置いとくとして、菊小僧についてちょっと。
金座裏で飼われるようになった菊小僧は「三毛猫のオス」ということですが、佐伯はそれがどれだけの価値があるか分かって登場させたのかちょいと?がつきますね。
十二巻に登場したときから菊小僧はそこいらにいるような野良の迷い猫か捨て猫のような扱いで、「三毛猫のオス」と分かっても宗五郎を始めとする金座裏の面々は驚きも感心もしないとはどういうこと?
「三毛猫のオス」は一説には染色体の異常もあって3万分の1の確率でしか生まれない貴重な猫であり、オークションにかければ最低で100万、好事家ならどれだけの金を積むか分からないような「お猫さま」なんだよ。
いくら金座裏では長いこと犬猫を飼っていなかったとはいえ、あまりに動物の生態に無知じゃないかえ?
春の盛りの発情期に猫が家出するのはそこらの猫飼いに聞けば分かりそうなものを、おみつは大仰にも寝込んでしまって手下どもを右往左往させる始末。それぐらいの知識はありそうな八百亀までもが猫探しに奔走するとは???
「三毛猫のオス」を登場させ、佐伯が今回の話のメインの一つに持ってくるのなら、「三毛猫のオス」の珍奇さを出すために、「見つからないのは千石船の水主が「船の守り猫」に連れて行ったのでは?」ぐらいのことも一つ加えたらまた違っていたんだろうけど、ただの飼い猫の家出で終わらせるとはあまりに芸がなさすぎ。