最後の物たちの国で (白水Uブックス―海外小説の誘惑)
この小説は、圧倒的に私たちを消失させる。数々の残酷で鮮烈なエピソードに人間の現在が映し出される。無数の物たちが姿を現しては、失われ、また現れる。ここを含むどこかで・・・。これは、決して近未来の話などではなく、今だ。
最後の誘惑 [DVD]
イエスが人間としての肉体を持って生まれてきたということは、この問題作のように人間としての苦悩を引き受け、疑いや迷いをも経験せざるを得ないというだと思います。十字架にはり付けられてからのエピソードも人間としての苦しみや悲しみ、弱さを背負うという観点から言うと、あながち嘘ではない。むしろイエスの心の揺れ動きを忠実に描いたのではないかとさえ思います。イスカリオテのユダも魅力的なら、バプテスマのヨハネもいい。イエスとの出会いで突然振り返り、「誰だ」と言うシーンはそれだけで鳥肌ものです。音楽も最高、全然長さを感じさせない作品です。