博士の愛した数式 (新潮文庫)
小説を読むことは、想像力を鍛えることだと思う。
80分で記憶が消滅してしまうという現実があるのか。
あるとすればそれは、どれくらいの苦しみなのだろう。
そういった苦しみを持っているからこそ、
人に、あらゆるものに対して優しくなれるのだとしたら、
健常であるということで、謙虚な気持ちを忘れてしまうのだとしたら、
そのこと自体、どれほど罪深いことだろうか。
博士がプレゼントを受け取るシーンは、
自然と涙があふれた。
こんなふうに、深い感謝で
「受け取る」ことのできる人になりたいと思う。
そして、人にものを教えるという仕事に就く者は、
同時にものを教えられているのだということを
いつもいつも忘れないでいたいと思う。