リスト:超絶技巧練習曲集(全12曲)
横山幸雄氏のトランセンデンタルを「流麗」とするなら、ベレゾフスキーのそれは「重厚」という感じ。また独特のダイナミクスやアゴーギクが出現してベレゾフスキー独自の世界を作っていますね。
ただ、同じロシア人でもベルマンやキーシンの演奏に比べると、鍵盤を弾き倒すロシアン・ピアニズムを継承していながら、ピアノに歌わせる部分が弱いような気がしました。
それでも迫力ある印象的な演奏であることは、間違いありません。ベルマン、キーシンに続いて横山氏と同率3位といったところでしょうか。
なお「You Tube」にベレゾフスキーの、ライブによる1〜12番すべての映像がアップされていました。指の動きをはっきり見ることが出来ます。そして鼻やアゴから滴り落ちる汗が、この曲の最高難度を物語っているような気がしました。本CD購入の前に観てみると良いかもしれません。
ラ・ロック・ダンテロン 2002シリーズ~ボリス・ベレゾフスキー [DVD]
最高のDVDである。音質も良く、映像も綺麗である。
他のピアニストと比較して、特に秀逸だと感じるのは、2番・6番・10番などである。
他の演奏も非常に秀逸であるが、多少スピードを出しすぎている事や、爆音を出しすぎている事が気になる。
敢えて悪い点を上げると、音が編集の所為なのか、グランドピアノの蓋をとっている所為か分からないが、少し不自然に感じる点である。
また、手元のみを映した映像が収録されていればモアベターであったが、流石にそれは贅沢というものなのであろう。
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番、第3番 (Rachmaninov : Concertos pour piano 2 & 3 / Boris Berezovsky - piano, Dmitri Liss - direction) [輸入盤・日本語解説書付]
ロシア人による21世紀のラフマニノフの演奏は如何に、という興味で購入した。購入してから気が付いたのだが、録音は実は7年も前の2005年8月で、かつ録音はフランスのメッツにあるホールで行われたものであった。ジャケットの作りはプラケースではなく厚紙の三つ折りタイプの結構凝ったものであり、MIRAREというレーベルがこの盤にかけた意気込みが伝わってくる。リス+ウラルフィル(UPO)という演奏者にはなじみがなかったが、解説によるとリス氏は1960年モスクワ生まれで1995年からUPOの常任指揮者をしている。UPOは1936年に創設され1992年に現在の名称になってからロシア以外でも知られるようになった楽団で、本拠地はウラル地方の中心地エカテリンブルクにあるとのことである。日本でも演奏をしたと書いてあるが残念ながら私は知らない。
聞いて直ぐに分かるのはその演奏スピードの速さである。私にとってこれらの標準演奏ともなっているアシュケナージ+プレヴィン盤と比べると、2番は各楽章で1分以上、3番は2分以上も早い。ベレゾフスキーの演奏は滑らかで細やかでサラサラと流れる清流を見るような(その分淡白な)印象があり、あの体格からパワフルなラフマニノフを予想していたので意外感が大きかった。そのような訳で、過去の名盤を出し抜いて自分の新しい標準となるというまでには至りませんでしたが、素晴らしい演奏と録音、装丁であり★4つと評価した次第です。
リストピアノ協奏曲第1・2番
なんと言っても、1番の協奏曲が絶品です。リストのピアノ協奏曲では、アルゲリッチの弾く1番が名盤とされますが、ベレゾフスキーのものは、それを超えるような技巧性を有しています。特に4楽章の圧倒的なスピード、切迫していくリズムが一気にラストにむかっていく様は、固唾を飲み込むような緊迫感に満ちており、思わず笑ってしまう出来で、とっても良かったです。もちろん、2番と、死の舞踏も最高ですよ。