横山やすし夢のなごり (ワニの選書)
著者は横山やすしほど知られてはいませんが、大阪の放送・出版界ではとても有名な方です。この本の中でも紹介されていますが、THE MANZAIブームが起きるまで暫くの間、漫才は低調でした。花王名人劇場がきっかけになって、と良く言われますが、その花王名人劇場のきっかけになったのは、新宿紀伊国屋ホールの秋田實一周忌記念・大阪漫才集団”笑の会”東京公演です。当時は、漫才は大阪の色物という扱いが東京には残っていました。東京の笑の殿堂は”笑点”でしょう。大阪の吉本、松竹の笑の文化とはやや異なります。大阪の人にはこういう気持ちがあって、大阪の笑を全国区に、という気合満点で合宿まで組んで臨んだそうです。その中心人物が著者です。こういう人だからこそ、やっさんを冷静に見つめられたのだと思います。過度の入れ込み、過度の持ち上げもなく、著者の描いたファンと同じ視線で見る横山やすし像が最も受け入れられるものでした。
20世紀名人伝説 爆笑!!やすし きよし漫才大全集~第2集~ [DVD]
漫才ブームの立役者のこの二人の漫才は、本当の記憶に残るおもしろさです。ぜひ、漫才ブームを知らない人でも笑えると思います。時代が変わっても笑える漫才なんてそうあるものじゃございません。絶対に見るべし!
天才伝説 横山やすし (文春文庫)
小林信彦は、自身も再三著書の中で述べているように、東京下町育ち
で青春を山の手で過ごした正真正銘の東京人であるが、その一方で
芸能・演芸好きの結果として関西言葉についても(ある程度の距離を
置きつつも)愛着を隠すことがない。その一方で、今やTVを制覇した
「似非関西弁」に苦言を呈するなど、東京文化の継承者としての批判
も忘れてはいない。本書は、小林の関西文化についてのそのような
スタンスを表現するかのように、関西人の目からすれば神格化され
がちな横山やすしの芸と人生についてひたすら冷徹な観察と小林自身の
やすしとの接触経験をもとにして書かれたものであり、単なる
一芸人に関する記録に留まらない、東西芸能文化比較論とも言うべき
好著である。なお、小林のもう一つの上方文化論と言える「唐獅子株式
会社」とも併読して、(映画化の際にやっさんの演じた)ダーク荒巻の
しゃべくりをやっさん風に想像してみるのも一興である。