秘剣・柳生連也斎 (新潮文庫)
剣の描写が非常にリアルで読むものをぐいぐい引き込んでいく。五味康祐が剣豪小説ブームを引き起こしたというのも理解できる。
とはいっても、著者の古風な文体は読むものを選ぶであろう。そこで、本作。異色作の「一刀斎は背番号6」が含まれている。
これだけは現代(といっても昭和30年代)を舞台にしているので、文体も現代調。一刀斎の技(?)も冴えわたる。まずはここからはじめてみてはいかがだろうか?
いい音 いい音楽 (中公文庫)
標題のとおり、いい音・いい音楽を追求して、
歯切れのよい評論をしている。
「思い立ったらたとどまらない」という評論なのでなかなか面白い。
なかなか面と向かって言えないことを、
感性や様々な体験に基づいた評論は、
本当に読んでいて引き込まれてしまう。
これは、きっと、いい音・いい音楽に対する「こだわり」であろう。
すがすがしい。
それ相応の「造詣が深い」といえる評論であるからこそ、
読んでいて気持ちがいい。
小論ばかりで構成されているので、
最初から読む必要がない。
ちょっと読みたくなって読むと、
やっぱりこの本の内容に引き込まれてしまう。
「納得、納得。」
NHK VIDEO 薄桜記 ブルーレイBOX [Blu-ray]
山本耕史主演のNHK時代劇ということで大いに期待して毎週オンエアーで見ました。
配役、脚本、演出どれも申し分なく毎週唸りながら時には涙しながら11週間あっという間に過ぎました。
これはストーリーなど細かな事は書かないほうがよさそうです、とにかく主人公は架空の武士、ある事情でお家が取り潰しになりしかも片腕を失います。そして気が付くとあの悪名高き吉良上野介(長塚京三)の用心棒となり、討ち入りを阻む役を命ぜられます。片腕ながらも無敵の剣豪と敵対する赤穂側の堀部安兵衛との友情、ダブルヒロイン、柴本幸とともさかりえ等全てが見ものです。吉良側から見た「討ち入り」も新鮮な解釈で歴史的にも楽しめますので大河ドラマ好きの方でも満足できる切ない系時代劇、しかし外国人には理解しがたい世界でしょうね。最終回は体が震えます、悶えます・・・「陽炎の辻」ファンも絶対見逃さないで。
薄桜記 (新潮文庫)
NHKのテレビ化で興味をもっての読了。品格があり、作者の識見も明白で、じっくり堪能できる佳作です。テレビも品よく製作されていましたが、原作の上質さは格別でした。あらためて五味康祐という作家の懐の大きさを実感しました。時代小説はこうでなくては。無闇に情調を強調しないところが、作品の深みなっています。教条的、という印象を持つ読者もあるでしょうかれど、史実に巧みに虚構を交えるところが作家の腕の見せ処、より多くの人に読まれるべき作品です。最高点をつけておきます。
柳生武芸帳〈上〉 (文春文庫)
セリフは文語調、複雑な人物相関図、ストーリーもいいところで暗転しまくる上巻。
上巻は相関図をメモしたり居合の用語を調べながら、最後まで読むべきか、
現代小説に慣れ親しんでいるナンパなわたしは悩みました。
* * *
下巻の前半でやっと慣れ、面白くなってきました。
軟弱現代人にはイタいところですが、かつての日本のよき精神としての、武士道、信・偽。。
全ての人の行動・人生において精神のありかたを問われているような
Take it easyに侵される前のストイックな美学に貫かれています。
武芸帳を発端に禁中・殿中の関係のなか天下平定のために暗躍する柳生の真意とは。
攻略のために研究行動する日本、一方、危機を迎えてからこそ緻密に敵を探る中国。
朝鮮・中国とのスパイものへ急発展か?いったい柳生はどう関わっているのか?
じゃあ謎多きあの人はいったい?あの人たちは何でしつこくあちこち登場したの?
といった雰囲気で未完に終わってしまいます。
そこがドラマ・映画で多様に展開できるしかけになりました。
武芸帳の謎で、多少の無理もあれ、
これだけ広範囲に深く広く展開しているものはないでしょう。
柳生もののみならず、時代小説の発展に多く寄与した作品というのもうなずけます。
最初の三つ星を撤回し、構成難解・未完の分僭越ながら恐る恐る−1とさせていただきます。
残った★は読者の想像力で楽しみましょう。