世界最後の日々
有害コミックに指定されようが、採り上げた題材が一般社会倫理に反してようが
山本直樹の作品は純文学である。それは「本質的に不愉快で、読者に自己否定・
自己超克をうながす」という文芸評論家福田和也氏の純文学の定義において。
そしてその不愉快さの底にコロリと、この上なくリリカルな情景が転がっている。
冒頭の短編「この町にはあまり行くところがない」のラスト、
主人公たちが歩く線路際の、夕暮れの風景を見よ。
指先が痛くなるくらいノスタルジアに覆われたアンバーな世界と、
その前に佇むしかない私たちがそこにいる。
その美しい世界は、あちらの世界や宗教の言う楽園郷のように私たちを魅了する。
しかし近いがそこに手の届かない乾きに
私たちは肌を重ねることで応えているのかもしれない。
繊細な絵柄に騙されると、危険な毒薬のような作品である。
くりいむレモン Part.16 [DVD]
昔懐かしい18禁エロアニメの元祖「くりいむレモン」。
森山さん(山本直樹)のこの作品はネットで見た事あるがまあ面白かった記憶がある。
ただ主人公の学生が終始一貫して「無表情」なのが不気味で、またそのせいでその存在感が異様に薄くなっている。
主人公が画面に映らないシーンでは、主人公に犯されているはずの女性があたかも「主人公抜きでひと◎エッチ」をしているようにすら見えた。
まるで「物言わぬ人形」のような主人公。
この主人公の一貫した「無表情」ははたして演出的に「正解」だったのか「失敗」だったのか……。
意見は分かれるだろうが、少なくとも私自身は正直まったく使えなかった。
「無表情」のアイデアは意外性とか感じられまあ面白いとしても、アダルトアニメとして現実的に使えないのではなんとも厳しい…。
最後にこのDVDは個人的に欲しいが、このような足元を見るような法外高値では当然、購入不可。
廉価版での早期再リリースを切に望む。