ヤクザガール 二代目は10歳【DVD】
日本人が観ると何だこりゃとなりそうですが、観る人によってはベストフィルムに入れてもおかしくないほどの味わいを持つ最高の映画です。ロシア語に堪能なヤクザの孫娘がたまたま降り立ったロシアで脱獄犯の逃亡の片棒を担ぐという、メチャクチャなコメディです。
サムライだのハラキリだのやたら出て来ますが、単にフジヤマ･ゲイシャ的に日本の文化を採り入れたわけではなく、かといってヨーロッパ優位で上から目線のパロディでもありません。ツッコミどころは多いものの、日本文化への憧れにも似た敬意と理解に基づき、知的な配慮をもってこの作品に日本的要素をちりばめたことがうかがえます。経済破綻、日本食、千島列島、空中浮遊(笑)など日露両国に関わる現実的な話題も盛り込み、日本文化を通してロシアの現実の一端を映し出そうとしているからです。根はけっこうシリアスです。
ロシアの俳優はみな存在感があってうまい。大佐の暴力的な妻が主人公ユリコのかわいらしさに対して見せる複雑な表情は絶品です。
ユリコ役の荒川ちかはルーマニアで最優秀女優賞を取ったそうですが、それも当然と思えるほど、演技うんぬんを超えてもはや彼女の存在自体が自然の恩寵であるかのように圧倒的な素晴らしさを見せます。最後の飛行場の場面など、表情をくるくると変えながら一分の隙もなく名演を繰り広げる彼女に、誰もが心をわしづかみされることでしょう。
ただでさえ難解なロシア語を外国から来た女の子が巧みに操っているのを見ると妙な感慨に囚われます。これも見どころのひとつ。劇中の音楽はロシア民謡としておなじみのものが多く、どこか懐かしい。近くて遠いロシアという国の理解にとても役立つ作品だと思います。
とにかく見どころ満載、何度も観直したくなる傑作と申し上げておきます。☆５つ。
