海辺の光景 (新潮文庫)
『僕の昭和史』を先に読み、本作を読んだものなので、あの教育ママで見栄坊だった氏の母堂が
痴呆となり死にゆく光景はとてもリアルな感じがした。
また誰しもがこういう光景に出くわすものだろうなとも思った。
愛犬物語
学生時代からの友人である近藤啓太郎氏に、半ば強引に押し付けられた紀州犬のコンタ。最初は渋々だった著者だけれど、一緒に暮らすうちにコンタの性格をこよなく愛するようになります。犬は飼い主に似ると言いますが、(著者は認めていませんが・・)扉ページのコンタとの写真を見ると著者とコンタは顔つきまでそっくりに見えるではありませんか。
犬好きの作家仲間の逸話も面白く、ダルメシアン→ダメニシアンなど笑えます。(おねしょした布団をかぶって歩いているような犬だそうです。)15年の間寝食を共にしたコンタ。「コンタの上に雪降り積もる」この文章の中に著者がいかにコンタを慈しんできたかがあらわされているように思います。
ユーモアのある文章、思わず笑ってしまうようなエピソード、べったりしていない犬との関係。とても読み応えのある本でした。
サアカスの馬・童謡 (21世紀版少年少女日本文学館)
この本はずっと以前から買おうか、どうしようかと迷っていました。が、買ってよかったと思いました。八人の著者はいづれも
そうそうたるプロの作家達。作品が素晴らしいのは当然といえます。大人向けの本と違うのは綺麗な水彩画が載ってること。
難しい言葉や古い言葉は欄外に絵入りで説明が付いていること。いままでに読んだ作品も載っていますが、まったく違う感覚で
読むことができました。子供たち、そして毎日の生活に少し疲れた大人たちにお勧めです。
死との対面: 瞬間を生きる (知恵の森文庫 t や 6-1)
新幹線のなかで読もうと手にしたこの本。とても読みやすく、しみじみしました。高齢者とはどんなことを考えて、日々過ごしているのか、片鱗が感じられます。自分もあっという間に、同じ立場になるのだろうと思うと、とても勉強にもなります。まだご存命で、今年で92歳とか、驚きました。寿命と健康って、不思議ですね。
若い読者のための短編小説案内 (文春文庫)
第三の新人と呼ばれる人たちの短編小説の村上春樹の視点によっての読書案内。
精読というものはとても難しいものです。一読しただけでは全体像すら掴めないし、何度読んでもそのたびごとに自分の心境には変化があるものです。だから、この本を読んでこういうことなのか、と思ってはいけないんだと思います。ただこういう見方、視点もあるんだな、と思ったほうがいいと思います。
でも、あの村上春樹が言っていることなのでどうしても納得せざるを得ないところがありますね。読み方が難しい本だと思いました。