球道無頼 こんな野球をやってきた
大沢親分の自伝的一冊。ざっくばらんな語り口に圧倒される思いです。
平素のべらんめぇ口調そのままの全快トークが炸裂。
「それを言っちゃヤバイですぜ親分!」
と突っ込みを入れること数回。
ベンチに盗聴器をしかけたり、自軍の攻撃時だけ飛ぶボールを使ったり、
今やったら大問題という奇策のオンパレード
「これがうまく行かねぇのよ」
と、あっけらかんとして笑い飛ばすのは親分ならでは。
しかしかつてのプロ野球では、親分に限らずこういうことは多々行われていたという
数々の証言もあり「そういう時代だった」で良いでしょう。
かの有名なミスターの「巨人入団の経緯」も、本書の中、鶴岡監督、大沢親分との
三者息詰まるやりとりとして再現されています。
球界を震撼とさせた西武の「栄養費事件」ですが、
これも長年続いてきた球界の因習。
親分のような重鎮の口から赤裸々に語られることにより、
問題の根深さと、時代の価値観や道徳観の変遷を追うことも可能になるのです。
近年のこぎれいなドーム球場ではグラウンドも観客席も随分と品が良くなり、
気の利いたヤジの一つも聞けなくなりました。
親分のような「うるさ型」のキャラクターは、やはり得がたいものと言って良いでしょう。
プロ野球ファン必見の一冊であります。