警視庁草紙〈上〉―山田風太郎明治小説全集〈1〉 (ちくま文庫)
山田風太郎の「明治物」の存在は知っていたが、今まで食わず嫌いだった。しかしこれが食べて(読んで)みると結構いける。忍法帖のように奇想天外な忍法が出て来る訳ではないのだが、「意外性」があるのだ。「発見」がある、といってもいい。円朝の名作「怪談牡丹灯篭」誕生の秘密を扱った冒頭作に始まり、桜田門外の変で井伊大老を暗殺した水戸浪士の生き残りが警視庁巡査になっており、新撰組副長斎藤一も巡査になっている。それは多分史実であろうが、一方虚構として、「物語」が始まる。それが織りなすもの哀しさ。この物語「あわれ」という言葉が最もぴったりくる
甲賀忍法帖 山田風太郎忍法帖(1) (講談社文庫)
この本を初めて読んだ時は、昔のライトノベルのようなものかと軽視していました。しかし、最初の犠牲者が予想外
の人物で、さらには不戦の約定が解かれた事も知らずに次々に仲間が倒れていく展開には度肝を抜かれました。
物語の最初からお約束のフェアバトルなるものを見事に無視するのはさすが山田風太郎だと思いました。
型破りのストーリも一流ながら、物語の中で一番面白いのはやはりそれぞれが使う想像を絶した忍法勝負です。
ある者は絶体絶命の場から逆転し、ある者は予想外の忍術に倒され、さらにある者は最強と思っていた忍術が敵の忍者と相性が悪いために
倒れてしまう・・と読んでいる自分が『あの時彼がこうしていれば・・・』と思わずにはいられなくなります。おもしろいのはその忍術全て医学的に解明なんかしてます(笑)。
今はマンガやアニメにもなっていますが、これらもかなりうまく
再現、アレンジがされているのでこちらも是非おすすめします。
映画は・・・・・・・この世界観が好きな方は見ないほうが・・・
魔界転生 [DVD]
この頃の千葉真一は本当に素晴らしい。
千葉真一が柳生十兵衛を演じているのではない。
柳生十兵衛=千葉真一なのだ。
そう思わせるだけの力が本作品に漲っている。
ジュリーにしても同じこと。
あの日あの時のジュリーの性別を超えた存在感なくしては、
本作を伝説級の映画とすることは叶わなかったであろう。
もはや2度とつくりえない、ありえない神映画。
必見。
人間臨終図巻1<新装版> (徳間文庫)
独特の作風で知られる作家・山田風太郎が、英雄、武将、政治家、作家、芸術家、芸能人など923名の臨終の有様を、容赦のない筆致で描き出し、亡くなった年齢の若い順から並べた『人間臨終図巻』(山田風太郎著、徳間文庫、全4巻)は、一読に値する。
風太郎の「いろいろあったが、死んでみりゃあ、なんてこった、はじめから居なかったのとおんなじじゃないか、みなの衆」という言葉は、妙に説得力がある。例外なく、否応なしに、死は全ての人間に訪れるが、このように考えると少しばかり気が楽になる。
英国の批評家・エッセイスト、ウィリアム・ハズリットが『テーブル・トーク』の中の「死の恐怖」に記した「かつて自分が存在しない時があったことなど、誰も気にしない。とすれば、自分がいなくなる時が来ることも、何でもないはずだ」という一節も、風太郎と同じことを言っている。