あの女(オンナ) (文庫ダ・ヴィンチ)
さして期待もせずに読んだのですが、意外な拾いものでした。
実際の女の怖さが、実にリアルです。
生霊、という言葉も出てはくるのですが、そこはさほど怖くありません。
とにかく、生身の人間です。
これも一種の怪談かもしれない、と思いながら読みました。
インプリント~ぼっけえ、きょうてえ~ [DVD]
次々と目先を変えた作品をやつぎばやに世に送り出し続ける三池監督の引き出しの多さにはまったくもって驚かされる。ついこないだまで鳥取で撮ったお祭り騒ぎの夏休み超娯楽大作だのメジャー向けケータイホラーだのがヒットしていたかと思ったら今度は思いっきりアングラな、あちこちで放送禁止になるのも納得の激ヤバ映像満載のホラーである。
元々一部の三池作品においては、常軌を逸した暴力や残虐なシーンはほとんどお約束といっていいくらいだが、この「インプリント ぼっけぇきょうてぇ」ではフリークス、近親相姦、目を覆うような拷問シーンなどキワモノてんこ盛りという感じで、どこか場末の見世物小屋を思わせるいかがわしさと猥雑さが全編漂っている。原作の、岡山の土民の言葉が持つ湿度の高いコワさ、まがまがしさこそないものの、全編英語で撮っているのが妙な効果を生み、「女郎と馬しかいない島」という設定とあいまって一種幻想的な「どこでもない場所」が出来上がっている。
コワいと言えば、原作者の岩井志麻子が「針を刺す女」の役で登場しているのだが、これがシロウトとはとても思えない堂に入った(?)エキセントリックさで、コワいといえばこの人が
いちばんコワかった。
例の、ケータイを主役にした王道ホラーなどとは一線を画した作品で(個人的にはこちらの「インプリント」の方がより三池監督らしい出来上がりとは思うが)コワいもの好き、というよりキワモノ好きの諸氏におすすめの一品です。
ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)
いつもは文庫本になるまでまず買わんのに、発売直後タイトルに思わず飛び付いてこうたんじゃ。
うちゃ岡山に生まれ育って35年経つんじゃけど、「最近「ぼっけえ」ゆうて使わんようになったなあ。」と思いつつ読み始めたんじゃ。
文章から臭うてくるかび臭せえ、生臭せえ臭い、血のあけえ色と闇のくれえ色が読後も目の前を覆い続けたんじゃ。
ラストは、そがあに衝撃的なもんじゃねかったけど、ラストに辿りつくまでのおどろおどろしい道程は、なごう感じられたよ。
どんどんその世界に引き込まれ、はよう先を見てえと思うんじゃけど、粘々した泥みてえな文章に足を取られるようじゃった。
「キツイ・キタナイ・キモチワルイ」というんが他県の方の岡山弁の印象じゃゆうて聞いたことがあるんじゃけど「ほんまにその通りじゃ。」と思うたんじゃ。
岡山弁がこの作品を引きたてたんか、この作品が岡山弁を引きたてたんか?
遊女の語りという文体で書かれとったことが、ぼっけえ効果的じゃった思うたよ。
岡山弁と岩井さんの描くきょうてえ世界に浸るんが心地ようさえ思える作品じゃった。
まあ、いっぺん読んでみねえ。