戦艦ポチョムキン (国民文庫 839)
オデッサの階段シーンはあまりにも有名だが、この映画のテーマである「革命」は、いまや過去のものになっているのではないだろうか。だからといって、この映画の価値が無くなってしまったと考えるのは早急だろう。たしかに、この映画は、多くの映画に影響を与えたことは否定できないからだ。
本書には、映画に関するエピソードがある。たとえば、オデッサの部分には、エイゼンシュテインの母親が出演していることや、エイゼンシュテインが日本語に興味を持っていて勉強していたことなどがある。
ただ、『戦艦ポチョムキン』に詳しいひとには、量的に物足りないかもしれない。しかし、巻末のシナリオは、資料的価値が高いと思う。
戦艦ポチョムキン 復元(2005年ベルリン国際映画祭上映)・マイゼル版 クリティカル・エディション [DVD]
本作品は様々なメディアが出ていますが本メディア(復元マイゼル版)が決定版でしょう。映画としても見事なテンポ、見事なストーリーテリングです。「血の日曜日事件」と共にロシア革命の幕開けとされる「戦艦ポチョムキンの反乱」を描いた歴史的傑作を決定版にてぜひご覧いただきたい。
戦艦ポチョムキン [VHS]
世界映画史上の最高傑作の一つして、賞賛され続けて来た、映画の古典である。又、ソ連映画の中では、「戦前のソ連映画の最高傑作が『戦艦ポチョムキン』ならば、戦後ソ連映画の最高傑作は『アンドレイ・ルブリョフ』であろう。」と言った人が居た様に、タルコフスキーの『アンドレイ・ルブリョフ』と対に比較されてもおかしくない、傑作である。
私は、ロシア革命には全く共感しない。しかし、この映画の芸術的価値は、そうした歴史観の問題を棚上げさせるに十分過ぎるほど、高い物である。無声時代の白黒映画が、これほど迫力を持ち、人の心を揺さぶる事は、技術ばかりが進化した昨今のハリウッド映画の空しさを痛感させる物であり、その意味で、この作品は、今こそ、見直されるべき作品である。
それにしても、軍艦における反乱と言ふテーマは、何故、こうスリリングなのだろうか。考えてみれば、『ケイン号の反乱』も、『レッドオクトーバーを追え』も、『クリムゾン・タイド』も、『ユリョン』も、『亡国のイージス』も、軍艦における反乱のドラマであり、その意味では、『戦艦ポチョムキン』の焼き直しに見えなくも無い事は、驚くべき事ではないだろうか?(それに、『沈黙の艦隊』や『ジパング』も?)
(西岡昌紀・内科医)
戦艦ポチョムキン【淀川長治解説映像付き】 [DVD]
古典的名作ということで、十数年ぶりに買って見なおしました。若いときは分からなかったのですが、単なるモンタージュ映画の教科書的存在というだけではなく、画面そのものに映り込んだ「顔」の数々に見惚れてしまいました。彼ら彼女らが名のある役者さんだったのかどうかは分かりません。けれども時代や歴史を感じさせる「顔」が消え失せつつある最近の映像作品やメディアの文法と比べると、モブシーンとクローズアップの交錯とともにわき起こってくる圧倒的なリアリティは、追随を許すものではありません。一人一人の手や足、顔や声が、歴史を作るはず。今は亡き淀川氏の解説も、味わい深く、導入に最適です。
戦艦ポチョムキン[DVD] (<DVD>)
巨匠エイゼンシュタイン監督が確立した映画独自の表現手法、モンタージュ技法を最大活用した作品です。
近年の映画でも『戦艦ポチョムキン』へのオマージュやパロディは多く、社会主義やソビエトという国家を超えて映画の表現手法に革命をもたらした作品と言っても過言ではないでしょう。
そしてまた、構図のセンスにも注目して頂きたい。効果的な見せ方の工夫が随所にされています。
黒澤明監督が『トラ!トラ!トラ!』で描きたかったのは『戦艦ポチョムキン』のような撮り方だったのかもしれません。
最終的に、ほとんど役者さんの顔のアップがない、俯瞰の撮り方に終始している『乱』で想いは達成されたのかもしれません。
サイレント映画でぜひ見ておきたい作品としては、ほかに『雄呂血』『アンダルシアの犬』『メトロポリス』『イントレランス』などが挙げられます。
D・W・グリフィス監督も『國民の創生』を撮らなければ名監督として名を残せたと思うのですが残念です。
それとは対照的に、黒澤明監督は第二次大戦中に撮影された映画の多くを様々な監督が「軍部の強要により撮らされたプロパガンダ映画である」として、自らの作品リストから外しているのとは違い、「人間性を描くことを主題とした」として第二次大戦中に撮影された『姿三四郎』『一番美しく』などを自分の作品リストから外していません。
と同時に今見ても人間性について描いた作品であり、戦意高揚映画という印象は受けません。
ちなみに、個人的には「笑いのみを追及している」というストイックさからバスター・キートンのほうが好きです。チャーリー・チャップリンよりも。