ああ、堂々の自衛隊 (双葉文庫)
~まず、宝島文庫の『まれに見るバカ女』という本で、サヨクウォッチャー中宮崇氏の辻元清美氏について書かれてる項でこの本の事が挙げられていたので、興味を持ちました。
辻元氏率いるピースボートがカンボジアにやってきて、PKO活動で頑張ってる自衛隊員に嫌がらせめいた(というより、完璧嫌がらせだが)接触をしてきたという記述に、これは読まないと!と~~、思い、購入。
中宮氏の辻元批判は、それまで知る事も無かった「日本人による反日活動」ということに関心を持つようになるほど(反日活動をやりたくなるという意味じゃないですよ・・)激しいツッコミ文でしたが、これが宮嶋氏の文では、わき上がる怒りと大和魂をユーモアで包み込み、「男は度胸と哀愁や!・・そして下ネタ(笑)」の如くオチで笑わせてく~~れています。
下ネタ、汚物ネタ結構ありますが、これがまたすこぶる面白く、紛争地域や無政府地帯などで危険を省みず命がけの仕事をなさっているのね・・・ということを微塵も感じさせない文体で、結局宮嶋ファンになってしまいました。
辻元ピースボートや、平和をこよなく愛しているらしい市民連合さんの活躍っぷりを読んでみたい方も必読です。~
世代間連帯 (岩波新書)
軽く読めるし良い本だとは思う。
この本で上野と辻元がはっきりと累進課税の強化を言っているのは同感。マスコミも政治家も消費増税のことは声高に唱えるが、なぜか累進課税のことは議論すらしない。税調の答申でも取り上げられたのに、まったく黙殺されたままだ。実際の現場が垣間見える介護の話同様、その点は面白かった。
ただ時々出てくる辻元の屁理屈には閉口する。例えば文中2回ほど、辻元の『現在の状況は、内需を拡大せずに輸出に頼った大企業が悪い』と趣旨の発言が出てくる。
一体 企業がどうやったら内需を作れるのかボクにはさっぱりわからない(笑)。企業は需要が見込まれるほうへ経営の舵を向けるのであって、需要を作るために経営を行うのではない。そもそも人口が減ってるんだから、普通に行けば内需は減っていくのは当然だ。辻元の言に従うと消費者は企業のマーケティングに踊らされるだけの愚かな存在だろう。この人、人間という存在を馬鹿にしているのではないか?為政者とは別に、民間のいわゆる草の根の人間が、このような屁理屈を煽って仮想敵を作って人を動かしていく、こういうのを草の根ファシズムというのではないだろうか。
それに比べると上野は遥かにマトモだ。派遣社員の規制強化を唱える辻本に『それでは企業の海外移転を助長するだけ(雇用も内需を減らすだけ)』とたしなめる大人の常識は健在。上野との対談でなければ、まともな本として成り立たなかったと思う。
でも二人とも、結論を簡単に『連帯』とか美しいキャッチフレーズで言い切っちゃうのはどうなんだろうか。他人と連帯できない人間が世の中ではおそらくもっとも弱者なのだ。例えば現実に派遣社員の人でも(それだけではないが)他人との連帯が苦手な人も多いのではないだろうか。もしかしたら、それは自己責任と切捨てるのだろうか(笑)?
この本では、上野も辻元も連帯と簡単に言い切ってしまうことで、本当の弱者を切り捨ててしまっている、残念ながら。
不肖・宮嶋の「海上自衛隊ソマリア沖奮戦記」 (家族で読めるfamily book series―たちまちわかる最新時事解説)
不肖・宮嶋こと宮嶋カメラマンのルポなのだが、従来とは一風変わっている。出版社がいつもと違うからだろうか、「家族で読めるfamily book series」という形式だからだろうか。
海自によるソマリア沖海上警護の話題を中心に、出発する際の親子の別れ、海上での過酷な勤務を追う。のだが、
・そもそも海自を派遣する理由は何?
・ソマリアってどんな国?
・なんでこんなことになったの?
・自衛隊の過去の海外派遣ではどんなことがあったの?
・派遣に反対する社民党国壊議員(注意、辻本議員の自称である)の辻本さんって
どんな人?
・カンボジアに陸自が派遣された時に、辻本さんって現地で「環境への影響は
ないのか」なんて質問して太田3佐(宮嶋氏命名ゲッペルス)を困らせちゃったの?
・朝日新聞ってカンボジアで自動車が事故って動けなくなったのを自衛隊に
救助されていたの?
なんてことを、子供でも分かり易いよう、関西弁会話調で(これはいつもと同じ)解説している。
下ネタも無い、入国時に賄賂を送る話も無い、ムスリム国家に酒を持ち込む話も無い、飛んでくる砲弾から逃げ惑う話も無い、死体が転がる戦場の話も無い、ぼったくりタクシーの話も無い、パツキンねーちゃんも無い。無い無い尽くしだが、代わりに安心して子供に読ませられる本だ。しかも100ページ足らずと薄い。
しかし、現地に滞在して自衛隊員の苦労もきちんと取材して掲載している。さっと取材してさっと帰って行く大報道社とは違うのだ。
この手の本だと、自衛隊反対派に読んで欲しいとかのご意見があるが、多分無駄だと思う。彼らは絶対に読まないからだ。例え渡してもゴミ箱直行だろう。悲しい現実だ。