Time Remembered
1~5がソロ、6から後がリヴァーサイド時代の最後を飾る"At Shelly's Manne-Hole"に収録しきれなかったTRIOでの演奏で、言わば「残り物」を集めたわけであるが、これほど強力な残り物もなかろう。
まずは、「シェリーズ・マンホール」の演奏が素晴らしい。この6~13は、'80年代にやはり同じ "Time Remembered" のタイトルでLPで出され、私もそのころから愛聴しているが、なぜそれまで未発表だったのだろうと首をかしげるような最高の演奏だ。今回CDで買い直して聴いてみたら、思ったより音がよいのでますます気に入ってきた。
それに加えてソロの5曲が素晴らしい。本人が気に入らずに80年代までオクラになっていたものだというが、どれも最上の演奏である。1~4は、ラファロの死後立ち直ろうとしていた'62年のもの、5のみが'58年の演奏。特に、10分を越す1の「ダニー・ボーイ」が、メロディが淡々と慈しむように紡がれ、胸を打つ。前半の5曲を目的に買ってもまちがいはない。
どちらから見ても、「最強の残り物」集だ。
決定盤!!クラシック・スーパー・ベスト101
6枚組で、TV・映画・CM・携帯着信音などで聞き覚えのある曲が
101曲聞けます。
1曲あたりだいたい5分前後で、短いものは1分未満や2分未満の曲も。
次々と曲が切り替わる、クラシックの有名どころ抜粋集、という感じです。
ゆったりと聞くにはちょっと向いてないですが、
これから何を聞こうかな、という入門者向けの試聴盤によいかも。
(クラシック愛好家がわざわざ買う必要は無い気もします。)
ブックレットは、CDケースサイズの43ページ冊子。
曲目リストには、原題や演奏者名がアルファベット綴りでも記載され、
全曲、使われたCMや番組名なども。
解説部分には、作曲エピソードや作曲家紹介が各曲について書かれており、
初心者にはなかなか嬉しい作りです。
バブル・ボーイ(字) [VHS]
一言で言うと、面白い!ちょっと変わり者でも、ピュアな主人公の姿に胸がトキメキました。そして、最後まで見たら心が温かくなりました。主人公をとりまく個性的なキャラ達も笑えます。私はこのバブルボーイを見てジェイク・ギレンホールのファンになりました。その時はまだ彼の知名度はかなり低かったのですが、最近では「ドニー・ダーコ」「ムーンライト・マイル」などでだんだんと知られてきましたね。
ダニー・ボーイ
良い本かどうかは読者が決めるわけですが、絶版になっている本の古書の評価は高いことからも、その素晴らしさが分かるというものです。
2006年3月に惜しくも鬼籍に入られた久世光彦さんの切なる思いが詰まったエッセイ集です。演出家としてもエッセイストとしても卓越した作品を作り続けてきた久世さんのまさしくラスト・メッセージとも言うべきシリーズの第4作にあたります。
この世を去る「今際の際」に何を聴くのか、というテーマで連載が始まり、結局亡くなるまで14年間ずっと執筆されたということ自体が凄いと思いました。1編1編が見事な昭和歌謡史になっていますし、昭和という時代をとらえるのにこれほど分かりやすいエッセイもないのではと思います。久世氏の自伝のような趣もあり、激動の時代を生きた一人の知識人の生き様を感じる作品群ですから。
戦後をずっと引きずりながら、その思いのたけを綴った文章が並んでいました。昭和40年代の話題になったかと思うとまた戦後すぐの混乱期の話に戻るわけで、久世さんの戦後・昭和という時代へのとらわれが凄みとなって伝わってきます。
「昭和枯れすすき」を久世さんの「時間ですよ・昭和元年」に取り入れた話は、他でも繰り返し語られていますが、興味深いエピソードです。全く売れない艶歌歌手の「さくらと一郎」の歌が、番組の挿入歌として繰り返し流れたことを切っ掛けに百数十万枚の大ヒットになったわけで、どこに運が転がっているか分からないものです。レコードジャケットを描いたのは当時まだ無名だった橋本治さんで、これもブレイクする後押しを久世さんがされたことになります。まさしく名プロデューサーたるエピソードですが、それを自慢するのではなく、鋭い演出家の感性が世を捉えた思い出話となっていました。そのような魅力的なお話が満載ですから、絶版になっても多くの人から愛されるのだと思っています。
ダニー・ボーイ
超寡作の島田虎之介。たまたま調べたらラッキーなことにちょうど新作が出たところだった。この『ダニー・ボーイ』も前3作に負けず劣らずの傑作だった。
のちにトニー賞にもノミネートされる伊藤幸男という日本人が主人公だ。根っからの歌い手であるサチオは幼少の頃からその歌唱力で周りの人たちを驚かせ、幸せを振りまいていた。そんなサチオの一生をサチオに関わった人たちのかすかな記憶を元に振り返っていく構成となっている。
かすかに記憶に残っているというこの塩梅がいいんだよな。名前や実体は忘れてしまったんだけど、彼の歌声と彼と関わったときの幸せな記憶だけが身体に刻み込まれている。
各話のタイトルは全て曲名となっており、巻末にシマトラの曲目解説が付いている。2回目に読んだ時には、この解説を元に各話ごとに「YouTube」で曲を再生しながら読んでみた。これもまた趣があって良かったね。