法月綸太郎の功績 (講談社文庫)
久々の法月倫太郎シリーズの新刊は、短編集です。
相変わらず苦悩する名探偵&作者の両法月綸太郎氏がいい味を醸しております。
しかし、既にアンソロジーなどで発表されて作品が多く、多少物足りないかな?
いい加減そろそろ長編が読みたいのですが… と思うものの、
あとがきを見る限りでは、まだまだ新作長編に出会える日は遠そうです。
黒猫館の殺人 (講談社文庫)
ミステリには、各々の作品にトリックがあり、その謎解きがあり、結末(終わり方)がある。
たまたまこの作品を読む前に読んだアガサ・クリスティ作品の美しい終わり方を読んだ後で私には幸いしました。
この作品にはこれでもかと伏線が散りばめられてます。
読者は、どの言葉、どの仕草で、犯人やトリックを見破るか。。
感受性と知識を動員して、鑑賞しましょう!
頼子のために (講談社文庫)
2004年の作品『生首に聞いてみろ』が話題になった法月先生。
あの作品は賛否両論、というか好みがわかれる作風でした。
まあ、感想が様々に分かれる作品というのは、寧ろ様々な面白みがあるんじゃないかと私なんかは思うわけで。
はい。
『頼子のために』は、法月先生史上、ターニングポイントになった、とよく評される作品です。
ハードボイルド風味やサスペンス色が強い感じで、それがどうやらリーダビリティの向上に繋がっていると私は思います。
法月先生が、元来の資質を開花させた作品とでも申しましょうか。物語として読み応えあります。
で。
『生首―』があまり好きじゃなかった、という人が、本格ミステリに求めるものが、この作品にはバッチリ、ではないかと。
先述したように、主な展開はハードボイルド的でクール。
然し、最後に驚きの「真相」が―。後味が凄い。
文句無しに代表作のひとつ。お勧め。
キングを探せ (特別書き下ろし)
本屋の新刊コーナーで見かけて買ってみました。著者の名前は知っていましたが 読むのは初めて。どれどれ。
シンプルなパズルを徹底して論理的に読み解こうとする知的攻防にワクワクさせられながら一気に読み通しました。味わいは軽いけれど、こういうのを設定の妙というのではないでしょうか。
幕開けは倒叙形式で犯人側の個人的事情に感情移入させられながらも、物語が進むうち人間の矮小さ、醜悪さが浮き彫りになり、なんとも遣り切れない思いになる。
買って良かったです。
NOVA 2---書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫)
大森望氏編集による、書き下ろしSF短編集第2巻
「かくも無数の悲鳴」神林長平著
古典的なスペースオペラかと思いきや、量子論SFに展開していく
「レンズマンの子供」小路幸也著
ジュブナイルSF
「バベルの牢獄」法月綸太郎著
ラベンダーの香りならぬ、バニラの香り
電脳的牢獄からの脱獄を描いた作品
この奇妙な牢獄世界は、緻密な理論的法則に則られて成立している
さすが、本格ミステリでも活躍の著者だけはあります
小林泰三氏のSF(「海を見る人」等)が好きな人にはオススメだと思います
「夕暮にゆうくりなき声満ちて風」倉田タカシ著
タイポグラフィを進化させた実験的作品か!?
物理的にしんどくて、挫折して最後まで読めませんでした
「東京の日記」恩田陸著
戒厳令の敷かれた近未来(?)の東京が舞台
外国人による東京滞在記の体裁がとられている
色々な和菓子が登場します
戒厳令の敷かれている東京では、言論の自由が規制され、検閲も行われている模様
日付が基本的に某日となっている点や、人名がカタカナ表記になっている等
単なる日記なのか、それとも日記を装った告発なのか、色々深読みもできる
「てのひら宇宙譚」田辺青蛙著
5本の掌編を収録
結構、癖になる味わいだった
もっと、もっと読みたい
「衝突」曽根圭介著
終末(破滅)SF
著者お得意の叙述的捻りを加えた作品
「クリュセの魚」東浩紀著
遠未来の火星を舞台とした、ボーイ・ミーツ・ガール物語
火星の情景が素晴らしかった
第23回三島由紀夫賞受賞作「クォンタム・ファミリーズ」に関連する作品のようだが、この作本は未読の為、詳細はよくわかりません
「マトリカレント」新城カズマ著
どうも馴染めず、途中で挫折して、最後まで読めませんでした。
「五色の船」津原泰水著
未来を予知する妖怪「くだん」と多世界解釈SFを絡めた傑作
妖しい雰囲気漂う作品だった
幻想性とSFの持つ面白さが見事に融合していた
「聖痕」宮部みゆき著
神をテーマにしたSF
山本弘著「神は沈黙せず」で描かれた神は、個々の人間には無関心だった
本作の神は、個人と強く関係し合う
宮部氏の作品では、繰り返し扱われている「罪と罰」もテーマとなっており、非常に読み応えのある作品だった
「行列(プロセッション)」西崎憲著
幻想的な百鬼夜行