ハサミ男 (講談社ノベルス)
叙述形式のストーリーだとわかりながら読んだにもかかわらず
まったくもって予想できない結末でした。
途中で医師が誰か、ってことには気付いたけれど後半100ページはまさに「???」状態。
状況が飲み込めるまでかなりの時間を要したくらい。
それにしても、この「ハサミ男」
やることはとっても残酷なんだけれどなかなかどうして憎めないキャラ。
何度も何度も繰り返す自殺未遂のその方法が面白い。
よくもまぁそんな方法を思いつくなぁ…と(笑)
あと刑事達のキャラもなんだか人間臭くて面白い。
ただ、全般的な印象としてはちょっとダラダラ感も否めず。
一気に読破ってほどのスピードは得られなかった。
あと終わり方も「え?これで終り?」みたいなちょっと中途半端な感じ。
「ハサミ男」がどうして「ハサミ男」になったかだとかそのへんも描いてほしかったな。
ところでこの作品が映画化されてたらしいけどいったいどんな映像になってたのやらw
こういう叙述系を映像化するって何を表現したかったのかなぁ…?
素朴な疑問(笑)
鏡の中は日曜日 (講談社文庫)
2001年に講談社ノベルスとして出たものの文庫化。
著者のミステリはいずれも常識を越えたものになっているが、これもまた異色の作品。巨大なトリックが仕掛けられており、読んで納得するかは読者次第。怒り出す人もいるだろう。とはいえ、これだけ贅沢にトリックがつぎ込まれた作品も珍しい。サービス精神に溢れた殊能氏ならではだ。
それにしても複雑な話だ。何重にもだまされてしまった。
ハサミ男 (講談社文庫)
作者のデビュー作にしてメフィスト賞受賞作。凡作の多い同受賞作にしては出色の出来。サイコ・キラーの「ハサミ男」が自分の犯行手口を真似て殺された女性の死体を偶然発見するというギャグ的発端から始まって、目くるめく結末まで精緻な構成で読ませる。
自殺未遂を繰り返す「ハサミ男」の真の姿が徐々に明らかになっていく展開、「ハサミ男」が自分の犯した犯行のうち冤罪だけは晴らそうとするナンセンス、「ハサミ男」の冤罪事件の真犯人の意外な正体、"長さん"というデカがいる明らかにTVの刑事もののパロディの捜査陣。これらが渾然一体となって、とぼけたユーモアと乾いた文体で綴られていく。この作者の手腕は新人離れした卓越したものがある。
作者はこの後も、「美濃牛」、「黒い仏」など多彩な作品を発表しており、久々に期待の作家登場という感じがする。人間の深層心理を鋭く抉ったサイコ・キラーものの傑作。
ハサミ男 [DVD]
原作は良く使われる思い込みのトリックが使われているため、絶対不可能といわれていた殊能将之の小説。なるほど、着目点を変えてこういった設定にしましたかといった感じですね。
とても難しいのですが、この作品に関しては映画を見ると、小説の面白さが損なわれるし、小説を読むと映画のトリックを愉しむ事が出来ません。なので映画好きの人は映像を、小説好きな人はまず原作を読む事をお勧めします。それぞれ自分の好きな領域でまずは愉しんだほうがいいと思いますので。
古めかしい映像、音楽、演出と、ちょっと独特の空気はありますが、それなりの個性が感じられる野心作なので、これはこれでよく出来ているサイコサスペンスだと思いますよ。