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あしたも着物日和 (徳間文庫)
綺麗なコーデの参考本や、着付けの本、ライフスタイルの本・・・
着物関係の本は沢山出ていますが、いずれも、
センスの良い、欲しいなと思うものを既に手にしている
少数の「着物勝ち組」さんの手による書のような気がします。
近藤ようこ氏の本を読むのは初めてですが、
この本は参考云々ではなく、
着物歴わずか1年の私も激しく共感してしまう
着物への山あり谷ありの失敗と成功遍歴が
飾ることなく描かれていることが魅力です。
等身大の着物遍歴。
背伸びすることなく、一歩一歩自分の考えで
着物を楽しんでいくことの幸せを感じられる本です。
初心者の失敗遍歴ってポイントって共通しているのかも・・・
同じようなことを疑問に思い、
同じようなことで悩み、
それ以上に着物が好きになってどんどんハマっていく(笑)。
そんな印象があります。
既に同じ道を歩んだ先人がいることが心強く、
それだけに楽しみの深い世界なのだと実感します。
この本の中にある失敗、本当にあちこちでいろんな人が
(もちろん自分も含め)やっているんだと思うもの(笑)。
身丈の長い着物の裾を切ってしまう件は
大ウケです。
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ゆうやけ公園
ほーむれすさんに、ここの漫画の登場人物のように、気安く話し、できないでしょ・・。
でも、できちゃう。漫画だから。
しかも、あったかい、あったかい、漫画だから・・。
いい世界です。その一言です。ぜひ読んで、あったかくなってください。
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見晴らしガ丘にて完全版
本書を、稀代の読書家であり、マンガに造詣の深い評論家、呉智英が、その著書『現代マンガの全体像』(名著です、ぜひご一読を)で取り上げ、高く評価していたので、読むことにした。
読後の感想は、もう、「素晴らしい」の一言。私がここ数年で読んだマンガの中で傑出した面白さだった。
この作品は「見晴らしガ丘」という架空の新興住宅地を舞台に、様々な年齢・職業を持つ男女の生活の一齣を、鋭い批評精神と、繊細な感性で鮮やかに切り取り、一読、良質の純文学作品を読んだときのような気持ちにさせてくれる。
甘酸っぱく、切ない老人の恋心を描いた『初恋』、滑稽で、笑いを誘うユーモラスな『ママ…DORAEMON』『ご相談』、自意識過剰な文学青年の屈折を意地悪く、丹念に描いた『かわいいひと』など、収録作品は、どれも完成度が高く、バラエティに富んでいる。平凡な人間たちの人生に訪れる、劇的な瞬間を、短いページの中に凝縮して、余すところなく表現しきっている。こんな芸当のできる近藤の才能は、端倪すべからざるものだろう。掛け値なしに、マンガ好きなら読んで損のない作品であると、呉同様、私も評価する。巻末に収録されてある松浦理英子の解説も素晴らしい。
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カラー版 20世紀の美術
ピカソのある一時期の一作品を観るだけで、すぐさまその価値を理解できる人は少ないだろう。それにはある程度理詰めの学習が必要とされるからだ。しかし一度ピカソの生涯に亘る作風の変遷と、その当時の社会的あるいは美術的動向に目をやるなら、そうした作品の必然性と彼の美学を受け入れることができるはずだ。デュシャンの『泉』ではサイン入りの便器が芸術作品に成り得るとすれば、その理由はその時代の社会背景と彼の思想にある。20世紀美術を理解するには、視覚や個人の美的感覚に頼るだけでは不充分で、アーティストのイデオロギーの流れを知ることが不可欠になる。というのもこの時代の芸術家たちは自ら改革者、あるいは伝統の破壊者としての自覚を持って作品の創造に携わっていたからに他ならない。
本書は加速度的で、また同時多発的な現代美術史の動向を平易に、しかも話題に上る画家や彫刻家の作品を、小さいながらも最低一枚のカラー写真を掲載して解説しているところに特徴がある。また巻末には美術史の系譜と掲載された作品のデータ、それに簡単な用語解説集と参考文献及び人名索引が付けられた懇切丁寧な編集になっている。
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水鏡綺譚
読み終えてから、暫く水色が私を包んでいました。言葉では表しにくい感情です。切ないとも、希望が持てるとも言い難い、不思議な感覚でした。
日本独特の空気感というのでしょうか。何かを感じていたようです。(無に始まり無に終わる、空虚感に押し潰されるような…)ワタルと鏡子は、その世界を照らしてくれていたように思います。
あとがきも、是非目を通してみて下さい。