姉の結婚 1 (フラワーコミックス)
まず表紙にぐっと惹きつけられた。
海辺の田舎町。湾を見下ろす高台へ続く階段を長いこと登り続けてまだ途中。ふと後ろを振り返る39歳の女性の顔には悲壮感はなく、うっすら微笑んでいる。誰かに笑いかけているのだろうか、と考えるとこの1枚だけでドラマチックな妄想をしてしまう。
物語は、東京で何やら事件があり、悟りを開いたかのようなアラフォー女性が、生まれ育った田舎町に帰り、プチ老後と称して静かに生活していたら、彼女を長年慕い続けていた幼馴染の嵐のような求愛に翻弄されるというもの。よくある設定かと思えばこの男性、中学時代には太めでモジャ毛で暗いタイプだったのが、一転して細身のイケメンで大学講師も勤める精神科医に変貌を遂げていた。しかも主人公にそっくりな妻付きで。初恋の人が忘れられずにそっくりな女性と結婚したようで、夫婦仲は冷め切っている。しかしこの妻は自分に気がない夫のせいで浮気に走っているようにも見える。果たして、この男は、女としての人生が終りに近づいていると感じている主人公を、ただ振り回すだけではなく、恋の舞台に再び引きずり出す事が出来るのか、愛する人と同じ顔をした妻との関係を、大人としてどう決着をつけるのか見物だ。
それにしてもこの作者、緩急の付け方が絶妙だと思う。飄々とした日常から一転、どこにそんな熱い心が隠されていたの?と思えるようなはっとする描写があり、間合いの取り方といい、センスある台詞といい、見所満載なこの作品、何度も読み直し、早速続きが気になって本誌にも手を出しかねない勢いだ。
娚の一生 4 結婚 (フラワーコミックス)
3巻で完璧に完結だと思ってたら、まさかの4巻発売というこでかなりびっくりしました。
内容は補足みたいな部分もあって、私的には満足でした。
どうしても3巻は無理やり終わらした感があったので微妙だったけど、この4巻を読んだら納得です。
ぜひ読んで下さい。
女王様ナナカ 新装版 (リュウコミックス)
自分は既に既刊、大型本を持っているので、星3です。
既刊と比べてサイズ的に書棚に並べやすく、表紙絵の雰囲気も、既刊とほぼ同時期の『桃色の背中』と並べても違和感がありません。
初回には栞、月刊西炯子もついています。
雰囲気はきちんと西炯子ですが、話は大槻ケンジですかね。一、二話のナナカと三話のナナカが別人、かつ要らない男脇役も第三話には…あえて誰とは言いませんが。
新作収録はありません。
なので、話のレビューとしては既刊と同様です。
既刊をお持ちで、オマケに意味を感じられない人には、星は付かないかと思われます。
恋と軍艦(2) (講談社コミックスなかよし)
1巻で「うーん掲載誌のせいか子供向けだなぁ」などと思ってしまった私を、
素敵に裏切ってくれました。 目の曇った大人の浅はかさですね。
中学生の恋(しかも相手は28歳年上のイケメン知的町長)に絡めて
過疎・戦争・政治的根回しという、およそ手垢の付いていない分野に入って来ました。
手垢が付いてないと言うより、普通の少女漫画では手を付けないであろう分野です。
過疎の町の一大イベント「港まつり」を伝統通り粛々と行いたい町民と、
観光客誘致などで町の生き残りを目指す町長及び若手の町民との対立…
私、すごく選挙に身近な環境にいるのですが、こう来るとは思いませんでした。
しかし固いテーマだけじゃなく、海外の母親が贈ってくれた服がどれも小さい切なさとか、
今時のミニでフリルの浴衣を着たいのに、お婆ちゃんのお仕立てを着るしかないカナの葛藤とか、
「子供の悩み」で片付けられない、大人だって憶えがあるはずのエピソードに満ちてます。
そしてカナの唯一の友人、アキラのキャラが際立ってます。 あのサーシャに一勝してる…
しかしカナ、判り易い悪役の判り易い罠に引っ掛かるな(笑) 都会から来たのに。
巻末にファンからの「イラストコーナー」があってビックリ。そうだ「なかよし」だった。
なかじまなかじま 1 (花とゆめCOMICSスペシャル)
西炯子さんのマンガはSTAYシリーズが一番好きでした。
他もそれなりに楽しめたのですが、コレにはスカッとハマりました。
使い古された設定に今風で高レベルに軽妙なセンスが合わさるとなかなか最強ですね。
あまり言語化されて評価しているのを見かけないのですが、
初見からとにかく一番よかったのは、
主人公が出すオタクっぽさ(リアルな)の描かれ方がすごく秀逸で愛らしいこと。
心の解放区を見たとたん顔が晴れたり、オタク聖地の名を聞いてわくわくする2つの場面が特に。
そして、卑屈オタクに高身長からくる物怖じなさが加わってハプニングに説得力がある。
おっさんキャラは正常進化していて魅力は過去最高峰。
連載が隔月なのでもう雑誌を買おうかと。